インハウスローヤーの業務内容
企業内弁護士の業務は、法律が関わる業務全般です。
下記では、インハウスローヤーが任される業務を紹介していきます。
契約書の準備やチェック
法務部での主な仕事は、契約書チェックや契約書準備です。
全ての契約に関わる書類に目を通し、法的に違反がないか、契約する内容がこちらの不利益になる条件になってないかなど、間違いがないかなどをチェックします。
契約を結んだ後では、内容が不利益なものであってもなかったことにはできません。
また、法改正により法律に変更があった場合は契約書に変更が出る場合がありますので、そういったチェックも慎重に行う必要があります。
株主総会対応
株主総会の対応は、法務部で働く企業内弁護士の仕事です。
株主総会をスムーズに運営する為に、法律を遵守した株主総会の進め方で提出する議案が可決されるよう進めなければなりません。
株主総会での発言はとても慎重にする必要があり、法的な誤りが無いよう、提出する議案を検討・想定される質問の予測・それに対する発言のリーガルチェックをします。
コンプライアンス対応
近年コンプライアンス対応は、どの企業も力を入れています。
その理由の1つは、個人で情報を配信できるSNSが広まり、その内容により不祥事を起こさないようにするためでです。
法務担当は、研修やセミナーを実施するなどをして社員一人ひとりの法的知識・モラルの向上を目指さなければなりません。
コンプライアンス違反を防ぐため、マニュアルを作成し、社員教育に努めます。
知的財産・特許
新たな発明が自社のものとするために、特許出願をして知的財産として守ります。
企業内弁護士は、それに関わるトラブルの対処をします。
例えば、他社や辞めた社員が、無断で自社の特許技術を利用しているとき、紛争解決や訴訟手続きなどをおこない、法的に自社を守るのが仕事です。
債権回収
督促状や内容証明を何度送っても、債権回収できない場合も企業内弁護士が対応します。
多額の金額が回収できなければ、倒産といったことにもなりかねません。
その様な時は、法的に債権回収するため訴訟や強制執行の手続きをします。
また、代理人として法廷に立つこともあります。
海外展開準備と海外発の規則対応(GDPRなど)
海外に展開をする企業であれば、その準備にも携わります。
法律は、日本と海外では全く違いますので、その海外の法律を理解し違反が無いよう、そして損失が無いようすすめます。
大企業になれば海外に支店を出したり、海外と新たな取引を開始することもありますので、企業内弁護士には英語力を求めている企業が多いです。
訴訟対応
通常業務は、訴訟にならないよう慎重におこなっていますが、もしトラブルになって訴訟へ進展してしまった場合のサポートを企業内弁護士が行います。
担当者から事情を聴き、訴訟準備や顧問弁護士に依頼する場合は内容をまとめたり、場合によってはマスコミ対応などを広報とおこなっていきます。
M&A
M&A業務も企業内弁護士の仕事です。
買収対象企業の価値を落とさないよう、内密にプロジェクトをおこないます。
また、買収企業に重大な債務がないか・雇用関係維持に問題はないのかなど、企業の問題点を詳細にチェックしていきます。
コーポレートガバナンス対応
コーポレートガバナンスとは、企業の組織ぐるみの不祥事を防ぐために、社外で取締役や監査役を設け、社外の管理者が経営を監視する仕組みです。
それに対応するのも、社内弁護士業務の一つ。
長期的に企業価値を向上・株主を守るため、上場企業には社外取締役を設ける必要があります。
新規事業の設立に伴うサポート
新規事業を設立する時、リーガルリサーチとアドバイス業務をおこないます。
法的に問題がないかどうかを調べ上げ、法的にサポートしていきます。
また法令改正に伴う経営層への情報提供をおこなうこともあります。
労務問題
企業を守るだけではなく、企業で働く従業員を守るのもインハウスローヤーの仕事。
過度な残業・パワハラ・セクハラなどのトラブルに対し、企業内弁護士は対応します。
調査も含めデリケートな問題で、従業員と企業とでどちらにも気を遣わなければならない業務です。
新卒でインハウスローヤーになる就職難易度
続いて、新卒でインハウスになる就職難易度についてです。
結論から言うと、新卒でインハウスローヤーに就職するには比較的難しいです。
というのも、ほとんどの企業が「経験者」を求めているからです。
新人の弁護士であれば、司法修習後は法律事務所かインハウスどちらかに就職することを想定していると思いますが、大多数が法律事務所を選択するのは以上のような現状があるからなのです。
しかし最近では、コンプライアンス重視・紛争防止をするため、社内弁護士を早々と迎え育成しようとする企業も増えてきています。
それに伴い、新卒採用枠が今後増加すると考えています。
弊社リーガルジョブボードでは新卒歓迎のインハウス求人もご紹介できますので、就職活動中の司法修習生や弁護士の方は下のボタンからお気軽にご連絡くださいませ。
新卒インハウスローヤーの年収や初任給
インハウスローヤーの平均年収は500〜750万円です。
新卒1年目の年収で言うと、400万円程度。
しかし中には、弁護士資格を持っている方を重宝する企業があり、そのような企業は司法修習後すぐの弁護士でも年収500~600万円を初任給として提示されることがあります。
ただこのケースは稀で、基本的には無資格者の法務と同等の金額になることがほとんどです。
そのため法律事務所の方が稼げると感じる方も多いですが、確かに法律事務所の年収は、インハウスローヤーよりも高く、他の職種に比べ大きな収入を得ることができます。
しかしインハウスローヤーは、年収は法律事務所より少ないですが一般的な職種と比べればかなり高い方なのと、一般企業と同じように昇給で給与がアップしていくため、大きなブレがないことから収入面は「安定」しているのはメリットの一つです。
新卒でインハウスローヤーに就職する場合のキャリアパス例
司法修習後にインハウスローヤーへ就職する場合のキャリアパスについて、下記でお話していきます。
新卒でインハウスローヤーになった場合、どのようなキャリアの積み方があるのか、事前に把握しておきましょう。
企業内弁護士として役職を目指す
企業内弁護士として働きながら、役職を目指すキャリアの築き方があります。
役職に就くと給与がさらに安定し、依然として働きやすいためそのまま一般企業でキャリアを積み続けるケースは珍しくありません。
年齢を重ねると、企業内弁護士として年収1,000万円に届くようなケースもたくさんあります。
収入がグッとアップするといったことはありませんが、働きやすく待遇が安定しています。
インハウスから法律事務所へ転職する
さらに年収を上げたいという目的から、インハウスローヤーから法律事務所へキャリアチェンジするケースもあります。
インハウスから事務所へ転職する場合、インハウスは民事・刑事事件の対応経験がないことからいったん年収が下がってしまう可能性はあります。
しかし、法律事務所は自分の裁量で働けますので、経験を積んで多くの案件を対応できるようになれば、その分収入を得ることができます。
残業が多くなったり、企業と比べると福利厚生や制度が整っていませんが、その分自分次第で高年収を目指せます。
年齢に限らず収入をコントロールできうるのは、インハウスにはない魅力です。
インハウスから法律事務所へ転職を成功させるためのポイントは以下で詳細に解説しているので、あわせてご覧いただくと、最初にどのようなキャリアを積むべきか事前に把握できると思います。
新卒でインハウスローヤーになるメリット
司法修習後すぐに、インハウスローヤーになるメリットについて解説いたします。
福利厚生が充実している
一般企業ですので、福利厚生が充実しています。
企業によっては、社会保険だけではなくスポーツジムやリゾート施設の割引・退職金制度など、さまざまな制度があります。
安心して働きたい方にとって、福利厚生が充実しているのは魅力的です。
法律事務所は企業に比べて福利厚生が整っていないため、安定を求める方はインハウスを希望する傾向にあります。
ワークライフバランスが整っている
インハウスの所属先は企業になるため、法律事務所に比べて残業が少なく、有休を含める休日が多いです。
法律事務所ではフレックス制の事務所は多いものの、残業が多く、特に大手の事務所だと早朝から深夜まで働くといったこともあるようです。
しかし一般企業では、働き方改革が浸透しており、あまり残業を取らないようにしようという動きがあります。
※もちろん企業によってはブラックな職場もあるので、転職エージェントなどを用いて事前調査を徹底することが大切です
プライベートとの両立がしやすく、無理なく働くことができることが多いです。
ビジネスを学べる
インハウスローヤーは企業が健全な経営活動ができるよう、内部者として企業を支えます。
そのため、経営者や役員との関わりが多く、ビジネスの流れや事業の進み方を間近で学ぶことができます。
ビジネススキルをアップしたいといった方にとって、とてもやりがいがあると感じるはずです。
インハウスと法律事務所どちらに就職すべきか?
企業内弁護士と法律事務所、どちらに就職するべきかはその人の考え方や希望する働き方により変わってきます。
下記では、インハウスローヤーとして働く場合と、法律事務所で働く場合、どういった方が向いているのかをお話していきます。
ワークライフバランスを重視したい方はインハウスローヤー
プライベートを充実させたい、安定したところで働きたいといった方は、一般企業で企業内弁護士として働くことをおすすめします。
一般企業であれば、残業は多くなく、福利厚生も充実しております。
給与も良く、安定しており、働きやすいです。
なので、「家庭と両立をしたい」「安定した職場がいい」といった方は、インハウスローヤーとして活躍する道が向いていると言えます。
高年収や独立を目指したい方は法律事務所
高年収を目指したい・将来的に法律事務所の独立を見据えている方は、法律事務所への就職がおすすめです。
法律事務所では裁量制で働けるので、年齢にかかわらず自分次第で年収を大きくあげることができます。
インハウスは実務年数とともに徐々に年収が上がる一方で、法律事務所の場合は案件をこなせばこなす分だけ、高給与を目指せます。
また、独立志向が高い方も法律事務所が良いでしょう。
パートナー制度や独立の支援を行っている事務所であれば、経験を積みながらクライアントを獲得していくことができますので、キャリアを築くための基盤を作ることができます。
ちなみに、インハウスローヤーから法律事務所は少し就職難易度が上がりますが、法律事務所からインハウスローヤーへのキャリアチェンジはそれほど難しくありません。
そういう実態からも、最初は法律事務所を目指す方が多いのです。
新卒でインハウスローヤーになるために必要なスキル
司法修習後、インハウスローヤーになるためには必要なスキルや素質・条件がいくつかあります。
以下が踏まえられている場合、新卒でインハウスローヤーになれる可能性が上がります。
以下のうち、これまでの経験やエピソードからアピールできるスキルがあれば積極的に書類・面接選考で語りましょう。
語学力
語学力があると歓迎されます。
企業によっては海外案件があるためです。
大手企業ほど海外に市場を置いており、英語力が求められることが多いです。
弁護士資格があっても、語学力がなければスムーズに対応できません。
ここで言う語学力とは「英語」「中国語」です。
最近では英語だけでなく中国語の需要も高くなってきています。
法に関する専門知識に加え、英語力や中国語が備わっていれば、非常に重宝される存在となります。
コミュニケーション能力
各部署への法的アドバイスやサポート、弁護士事務所との対応なども業務に含まれます。
各部署の起こりうる問題や実現したい事柄に対し、会社にとっての最善の方法・実現する方法を法的観点から共に考え提案する能力・折衝力が求められます。
以上から、自身以外の方々と円滑にコミュニケーションを取れるかどうかが大切となります。
新しい情報を瞬時にキャッチアップできる瞬発力
世間の変化を敏感にキャッチアップできる能力は必須です。
特に、法改正により変更したルールを常に頭に入れていくスキルは大切。
それは、その変更によって契約内容が変化したり、今まで問題なかったことが違法になってしまわないようにするためです。
企業内弁護士は、法の面で企業が健全な活動をできるようサポートしなければなりません。
常に、敏感にアンテナを張っておくことで信頼さるインハウスローヤーとして活躍できます。
協調性がある・会社に尽くしてくれる人かどうか
協調性があり・会社に尽くしてくれる人物を企業は求めています。
企業内弁護士は、社内の様々な職種と関わりを持ちますので協調性があり、人に寄り添える人柄が向いています。
また、企業理念や考え方に共感し会社に尽くしてくれる人材かも採用側はチェックしています。
一緒に働きたい人物かどうかが、内定を左右するカギとなります。
新卒でインハウスローヤーになるための方法や活用すべきサービス
新卒でインハウスローヤーへ就職する際に、活用した方が良いサービスについてお話していきます。
【おすすめ】転職エージェントサービス
インハウスローヤーへ就職する場合、活用すると転職活動が圧倒的に有利になるサービスは「転職エージェントサービス」です。
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また求人紹介だけでなく、以下のサポートも無料で行ってくれます。
- 選考突破のための書類・面接対策の徹底
- 今のあなたが転職で実現できうる推定年収の算出
- キャリアパスの策定やご相談
- 求人の職場口コミやブラック度の情報提供
上記以外にも、転職エージェントを活用することで得られるメリットはかなり多くあるので、気になる方は以下の記事もあわせてご覧ください。
弁護士専門の転職エージェントであるLEGAL JOB BOARD(リーガルジョブボード)では、インハウスローヤーの求人を数多くご紹介いたします。
ご登録いただくと、ウェブサイトには掲載されていない、登録者限定の「非公開求人」を数多くご紹介いたします。
いま転職活動中の方、転職をうっすらと考えている方、どんなご相談にも乗りますので下のボタンからお気軽にご連絡くださいませ。
※お急ぎの方は右下のチャットもしくはお電話(03-6774-8902)でも承ります!
求人サイト
求人情報を集める際、多くの方が利用するとおもいます。
特に、ひまわり求人求職ナビのように弁護士専門のサイトは、探しやすく有益な情報を集めることができます。
ただ、サイトによっては募集が終了したものがそのままになっている可能性があるため注意が必要です。
司法修習生歓迎の企業説明会・就職セミナーへの参加
企業説明会や弁護士会の就職セミナーへの参加も一つの手段です。
また、求人票を見て「修習生もご相談ください!」と記載がある企業に応募するのも良いでしょう。
ただ、司法修習後の新人弁護士を募集している企業の求人はすぐになくなってしまいます。
なるべく早めに求人検索を行うと良いでしょう。
このような場合も、転職エージェントに登録を済ませておけば、新卒歓迎のインハウス求人が出た場合にすぐにお知らせできます。
OB・OG訪問
知り合い伝手で、企業で働くOB・OGに会いに行く方もいらっしゃいます。
「企業内弁護士という働き方を選んだきっかけは何か」「実際働いてみてどうなのか」など、生の声やお話を聞くことができます。
もしそういったカジュアル面談で意気投合できれば、採用面接に進めるというようなケースも珍しくありません。
まずは法律事務所からスタートする
サービスではありませんが、もしインハウスローヤーに就職したいのであれば、最初に「法律事務所」のキャリアを積んでおくことも選択肢の一つです。
というのも、前述したようにインハウスローヤーの求人は「経験者を募集しているところがほとんど」だからです。
なので、まずは渉外性法律事務所で顧問弁護士として業務を学んだ後に、一般企業へ転職をする方法があります。
企業内弁護士として弁護士生活をスタートしたいと考える方もいらっしゃると思いますが、新卒でインハウスローヤーを目指すよりは、ハードルは低く求人数も増えてきます。
新卒でインハウスローヤーへの就職体験談
司法修習後にインハウスローヤーとして就職をした方のお話をお伺い出来ましたので、紹介いたします。
【20代後半男性・修習後、1月入社】
私は司法修習後、企業法務部へ就職しました。
親戚が弁護士でかっこいいなと憧れて弁護士を目指したのですが、昔から体力がある方ではなかったのでハードワークでガツガツ働く姿をみて、自分に務まるのかなと不安に思っていました。
司法修習生の時、法律事務所の求人ばかりを見ていましたが、弁護士会の就職セミナーで様々な企業が出展しており、話をする中で「インハウスローヤー」として働く道もいいな!と考えるように。
しかし、転職サイトなどで求人情報を集めていましたが、数が少なく、なかなか面接までいきませんでした。
その時、転職エージェントから、新しく募集を始めた企業の求人をタイミングよく紹介してもらえ、応募することができ、内定をもらうことができました。
新卒歓迎・司法修習生歓迎のインハウスローヤー求人
新卒・司法修習生の転職は、弊社リーガルジョブボードをぜひご利用ください。
新人の弁護士歓迎、司法修習生歓迎の企業内弁護士求人は業界全体ではあまり多くはありません。
また、新たに募集を開始してもすぐに決まってしまうことがほとんど。
しかしリーガルジョブボードを利用することで、ウェブサイトには掲載されていない新卒・司法修習生を歓迎するインハウス求人の紹介が受けられます。
かつ、新しくインハウスの求人が掲載された際にすぐ連絡が送られてきます。
また、求人紹介だけでなく以下のサポートも受けられるので、活用しない手はありません。
- 複数の求人の選考を効率よく進められる
- 業界の専門知識や裏事情について把握しながら転職活動を進められる
- 給料面や入社時期などの交渉が可能
- 入社後のミスマッチを防げる
- どの事務所・企業が最善の転職先なのか判断できる
- 面接後のフィードバックを受けられる
なので、自分で求人に直接応募するよりも、転職エージェントを経由して応募した方が内定率が上がります。
詳しくは以下の記事で解説しているので、あわせてご覧ください。