弁理士試験の概要
まずは弁理士試験の概要から説明します。
受験資格
弁理士試験は誰でも受けられます。
例えば司法試験は、予備試験への合格または法科大学院を修了しなければ受験資格を得られません。
しかし弁理士試験はそういった縛りや条件がないです。
また、弁護士及び7年以上の特許庁の審判官又は審査官として審判又は審査の事務に従事した方は、実務修習を修了するだけで、弁理士資格を持つことができます。
試験科目
弁理士資格を取得するためには、以下の計3回の試験に合格しなければなりません。
試験科目 | 試験日程 | 合格発表日程 |
短答試験 ※マークシート式 |
5月中旬~下旬 | 6月上旬 |
論文試験(必須科目) | 6月下旬~7月上旬 | 9月中旬 |
論文試験(選択科目) | ||
口述試験 | 10月中旬~下旬 | 10月下旬~11月上旬 |
出題内容
次に、それぞれの形式の出題内容について解説します。
試験科目 | 出題科目 | 配点 | 合格正答率 |
短答試験 | 特許法・実用新案法 | 20点 |
全科目合計:65%以上 |
意匠法 | 10点 | ||
商標法 | 10点 | ||
工業所有権(条約) | 10点 | ||
著作権法・不正競争防止法 | 10点 | ||
論文試験 |
特許法・実用新案法 | 200点 |
全科目合計:54%以上 |
意匠法 | 100点 | ||
商標法 | 100点 | ||
論文試験 (選択科目) |
以下のうち1科目を選択
|
100点 | 60%以上 |
口述試験 | 特許法・実用新案法 | A,B,C評価にて判定 | 2科目以上でC評価がないこと |
意匠法 | |||
商標法 |
免除制度
弁理士試験には、試験科目毎に以下のような免除制度が存在します。
短答試験の免除条件 以下の条件に当てはまる人は、選択科目の受験が免除されます。
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論文試験(必須科目)の免除条件 以下の条件に当てはまる人は、論文試験(必須科目)の受験が免除されます。
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論文試験(選択科目)の免除条件 以下の条件に当てはまる人は、論文試験のいずれかの選択科目の受験が免除されます。
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口述試験の免除条件 以下の条件に当てはまる人は、いずれかの選択科目の受験が免除されます。
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弁理士試験の難易度
次に、弁理士受験者に関するデータから弁理士試験の難易度について解説します。
受験者数
2019年度の受験者数は3488人であり、年々減少傾向にあります。
ここ5年間で言っても、約1,500人ほど受験者数は減少しています。
これは日本国内の出願件数の減少や価格競争の激化により、弁理士の資格を取得することに魅力を感じなくなってきているからと言われています。
合格者数(合格率)
2019年度の合格者数は284人で、最終合格率は8.1%でした。
また合格率は、6~8%台を推移しています。
試験別合格率の推移は、以下のとおりです。
全受験者のうち短答式に合格するのが2割弱、さらに論文試験に合格するのがそのうち2割強という、非常に低い合格率となっています。
平均受験回数
直近の合格者は、平均3~4回の受験経験があります。
一年で口述試験まで合格を目指すのは、至難の業と言えそうです。
年度 | 受験回数 |
2017年 | 4.17回 |
2018年 | 3.78回 |
2019年 | 4.07回 |
合格者の男女内訳
毎年合格者のうち、7割近くが男性で、女性は2~3割弱です。
そもそも理系職に就く女性が男性よりも少ない中で、理系の弁護士と言われる弁理士についても女性が少ないのが現状です。
合格者の年齢内訳
弁理士合格者の平均年齢は、37.6歳(2018年度)でした。
また毎年30代と40代が、合格者のボリュームゾーンとなっています。
以上のデータから、以下のことが言えます。
- 合格率はわずか8%
- 合格者平均年齢は30代後半
- 試験科目は計3つもある
加えて、試験科目が計3つ(短答試験・論文試験・口述試験)あることを踏まえると、弁理士試験の難易度は高く、付け焼き刃で太刀打ちできる試験では決してないと言えます。
弁理士試験合格のポイント
ここまで弁理士資格は難関資格である根拠を紹介しましたが、そうは言っても毎年受験者数の8%は合格しているのも事実です。
合格する人と合格しない人の差はどこで生まれるのでしょうか?
どうすれば効率的に弁理士試験対策ができるのでしょうか?
それは大学・高校受験と同じように、まず始めに効果的な対策方針を立て、立てた対策方針を忠実に実行することです。
そこでここからは、過去弊社会員や他の弁理士試験の合格者からの情報を参考に、弁理士試験合格のためのポイントについて紹介します。
勉強時間を確保する
弁理士試験に合格するためには、3,000時間ほど勉強する必要があると言われています。
これは毎日5時間勉強しても、約1年半かかります。
実際に受験生の話を聞いてると、平日は5時間ほど、休日は予備校の講座も含めて10時間ほど勉強する方が多いです。
まずは、まとまった時間を捻出できるように仕事量を調整することからはじめましょう。
※ちなみに弁理士の多くが就業している「特許事務所」の中には、弁理士受験のために残業を減らしてくれたり、弁理士受験休暇制度を設けてくれているところもあります。 よって弁理士資格の取得を応援している特許事務所に転職した後に、弁理士試験の勉強を本格的に始める人も多く存在します。 |
丸暗記をしない
例えば短答試験と呼ばれるマーク式問題の場合、「正しいものがいくつあるか」といったような問われ方をするため、断片的な知識で合格することは不可能です。
よって単に法律条文を丸暗記するのではなく、なぜそうなるのかといった背景までしっかりと理解することが大切です。
また独学で参考書を読んで理解するよりも、映像授業の講義を何度も見て理解する方が、頭に入りやすく、誤った理解を防げるため、おすすめです。
まずは短答試験の勉強に集中する
弁理士試験は短答試験に合格しないと、先に進むことはできません。
反対に短答試験合格後2年以内は、短答試験をパスすることができます。
また短答試験・論文試験何れも、知的財産権法に関する内容が問われる点では共通しています。
よって、まずは短答試験に合格することを第一の目標にし、短答試験の対策に集中しましょう。
問題演習をしっかり行う
参考書や映像講座などで各条文について理解した後は、必ず問題演習を行い、どれだけ理解が進んだのかを把握するようにしましょう。
ここで大事なのは、点数を取ることではありません。
間違えた問題については、解説を読む事で誤答の原因を把握をした後、間違えが多い分野に戻って、理解を深めましょう。
合っていた問題も、なぜその解答を選んだのかを人に解説できるぐらいになっておくことで、迷うことなく回答できるようになります。
弁理士試験対策に必要な教材
ここからは、弁理士試験対策をするのに持っておくべき教材を紹介します。
知財法文集
弁理士試験は条文を元に参考書が作られているため、絶対に必要なアイテムです。
特に「知的財産権法文集」、「四法対照法文集」、「論文式筆記試験用法文集」は持っておくべきでしょう。
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過去問
参考書や映像授業で得た知識をきちんと理解しているかを確かめるために、過去問は必ず買うようにしましょう。
特に短答試験に関しては、解説内容まで暗記できるほどやり込むことをおすすめします。
弁理士受験は働きながらでも可能?
最後に、弊社では知財業界専門の求人サイトLEGAL JOB BOARD(リーガルジョブボード)を運営しているため、
弁理士受験生から弁理士受験時の就労先についての質問を受けることがあります。
一番多い質問は、「弁理士資格は働きながらでも取得可能か」という質問です。
結論から言うと、可能です。
実際に9割近くの方が働きながら受験勉強をしています。
※ここで注目すべき点が、弁理士受験者の3割強が「特許事務所」にて就業しながら、試験対策をしていることです。 また会社員の多くが「企業知財部」に属しながら、試験対策を行っているのが実情です。 なぜなら、知財業界では弁理士資格に加えて「実務経験」も重要視されているからです。 よって弁理士になっても知財業界での実務経験がない場合は「未経験者」と見なされ、知財業界への転職の難易度が高くなってしまいます。 よってこれから弁理士資格を取る方は、合わせて知財業界での実務経験も積むことを推奨します。 弊社LEGAL JOB BOARD(リーガルジョブボード)では弁理士受験生向け(特許技術者・企業知財部)の求人のご紹介や、弁理士受験生に対する転職相談をいつでも承っております。 特許事務所・企業知財部の求人お探しやご相談はこちらから。 お急ぎの方は右下のチャットやお電話(03-6774-8902)でも承ります。
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まとめ
以下が本記事のまとめです。
- 弁理士試験の合格率は、1桁後半の難関資格である
- 弁理士試験の構成は、短答試験→論文試験(必須科目・選択科目)→口述試験の3段階
- 弁理士試験には免除制度もあるため、数年単位で合格を目指す人も多い
- 弁理士試験対策のポイントは「勉強時間の確保」、「法律知識の理解」、「短答試験の攻略」、「問題演習の量と質」
- 知財業界の実務経験がない場合は、受験勉強に並行して実務経験を積むことを推奨します