弁理士試験の難易度
令和元年度の弁理士試験合格率は8.1%でした。
ここ最近5年間の合格率は、6~8%台で推移しています。
また、合格者の平均受験回数は、4.07回でした。
これらのデータから弁理士試験の難易度は非常に高いことがわかります。
弁理士試験の難易度や内容について詳しく知りたい方は下記の記事をご覧ください。
働きながら弁理士を目指せる理由
冒頭でもお伝えした通り、働きながら弁理士資格を取得するのは可能です。
その理由を解説します。
受験資格を問われないから
弁理士試験を受験するのに年齢・学歴・国籍などの制限は一切ありません。
受験資格に条件があると思われる方も多いかもしれませんが、誰でも弁理士試験の受験は可能で、多くの人にチャンスがある試験です。
免除制度があるから
弁理士試験には免除制度があります。
これは、必須科目である「短答試験」「論文試験」「選択科目」それぞれに適用されます。
「短答試験」「論文試験」は、それぞれ1度でも合格すれば2年間は試験が免除されます。
また、以下の資格を持っていると「選択科目」が免除されます。
- 技術士
- 一級建築士
- 電気主任技術者(第1種・第2種)
- 電気通信主任技術者
- 情報処理技術者
- 薬剤師
- 司法試験合格者
- 司法書士
- 行政書士
この制度をうまく活用し、試験の負担軽減をしながら合格を目指す方が多いです。
働きながら弁理士を目指す人の割合
例年、弁理士合格者の80%以上は、働きながら合格された方です。
弁理士試験だけに備えて仕事を辞めて学習に専念している人はごく少数です。
他の法律系の試験と比べても、働きながら目指す人の割合が多い特徴があります。
令和元年度の試験では、会社員が46.1%で最も多く、次いで特許事務所勤務が34.5%でした。
3〜4割の方は特許事務所で働きながら弁理士試験を受けている
働きながら弁理士試験を受ける方々の中で二番目に多い割合の職種が「特許事務所で働く知財職種」です。
その中でも一番多い職種は「特許技術者」です。
特許技術者とは、弁理士と同じ業務を行う弁理士のアシスタントのような職種。
特許技術者としての実務経験を積んでおくと合格後の転職活動が大きく有利になるため、特許技術者として働きながら資格取得を目指す方もいらっしゃいます。
働きながら弁理士を目指すメリット
続いて、働きながら弁理士を目指すメリットについてまとめます。
働きながら資格取得を迷っている方は、以下を参考にすると良いでしょう。
社会人経験があると転職が有利になる
一つ目のメリットは、弁理士になる前に就業経験があると合格後の転職活動が有利になることです。
前職の業務が知的財産関係の仕事であれば、より有利に働きます。
知的財産関係の仕事ではなくても、メーカーでの研究開発やシステムエンジニア・薬剤師など、特定の技術分野に関わる経験は、技術の専門知識が求められる弁理士の仕事に大きく寄与します。
実際、弁理士のほとんどの方が企業などで開発業務などに携わってきた人ばかりです。
金銭的余裕ができる
二つ目のメリットは、金銭的余裕ができることです。
資格勉強をする際、人によっては教材費がかかります。
テキストの購入だけでなく、通信講座や塾に通う場合は費用がさらに大きくなります。
そのため働きながら勉強をする場合、経済的な安心感があります。
働きながら弁理士を目指すデメリット
続いて、働きながら弁理士を目指すデメリットについてです。
勉強時間の確保が難しい
弁理士試験に合格するために必要な勉強時間は、一般的に3000時間程度と言われています。
これは1年間だと、1日約8時間~9時間の勉強時間を確保すると到達する計算です。
フルタイムで働く場合、必然的に、勉強時間は帰宅後の時間と土日・祝日が中心となるため1日約8時間~9時間の確保は難しいでしょう。
また、残業や通勤時間が長い人は、帰宅後にまとまった勉強時間をとることは難しいです。
通勤時間やお昼休みを使って勉強をしている受験生もいます。
また、勉強期間中は会社から高い評価を得ることは諦め、例えば、残業せずに定時で帰る、と腹をくくって勉強時間を捻出する方も多くいらっしゃいます。
本業による支障が出る
仕事をしていると、体力的な疲れ、人間関係・業務上のストレスなどが常に生じます。
その中で勉強を継続するのは、大変なことです。
勉強量や知識量を培う必要がある一方で、精神力や忍耐力も求められることになります。
実際に働きながら合格した方がやっていたこと
働きながら試験勉強をするのは決して楽なことではありません。
ここからは実際に働きながら弁理士試験に合格した方が、やっていたことをいくつか紹介します。
残業の多い職場を避ける
勉強時間を確保するために、残業の少ない職場を選んでいた方がいらっしゃいました。
また資格を取得する前から特許事務所に勤めていた方は、弁理士試験休暇などを利用して試験に集中できる期間を確保している方も多いようです。
隙間時間を有効活用する
隙間時間を活用して合格したという方がいらっしゃいました。
- 早起きして朝型の勉強スタイルにする
- 往復の通勤電車の中で参考書を読む
- 昼休みに勉強する
など、働きながらでも隙間時間を上手く活用することで合格したそうです。
テキストや過去問・通信講座の活用
働きながら弁理士を目指す方向けの、参考書や通信講座を活用していたという方も多くいらっしゃいました。
弁理士は人気資格であり、また働きながら目指される方が多い資格なので、テキストや通信講座が豊富であるという特徴があります。
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免除制度の活用
「働きながら弁理士を目指せる理由」の部分でもお伝えした免除制度を活用して合格をされた方がいらっしゃいます。
選択科目の免除のため、本業や自分の専門と親和性のある資格を取得することで、効率よく試験を進めることができたそうです。
働きながら合格した方の実際のエピソードや合格体験記
ここからは、働きながら弁理士試験に合格された方の実際のエピソードを紹介します。
男性・30代・元特許技術者の方の合格体験記(受験回数4回)
大学卒業後は電気系のメーカーで研究開発の仕事をしていました。 研究開発の仕事をする中で、特許に興味を持ち弁理士を目指すようになりました。 しかし当時は月50時間以上の残業をしていたこともあり、弁理士試験勉強との両立は現実的に厳しい状況でした。 そんなとき、特許事務所では、弁理士試験勉強しながら働けると知り、特許技術者として特許事務所に転職をしました。 そこから、朝の通勤時間や終業後の時間などを活用して、本格的に勉強を進めました。 受験生には残業をさせない風土や、弁理士試験前に長期休暇がもらえる制度など、事務所のサポート体制が手厚く、勉強と仕事を両立できました。 念願の弁理士資格を手に入れたので、今までの特許技術者としての実務経験を活かしつつ、どんどんキャリアアップしていきたいと思っています! |
女性・40代・元医薬品メーカー勤務の方の合格体験記(受験回数6回)
医薬品メーカーで、開発の仕事をしながら受験勉強をしていました。 残業はなくほぼ定時に帰れていたので、1日6時間ほどの勉強時間を、ほとんど毎日確保できていました。 2年ほど独学で勉強したのですが、なかなか上手くいかず通信講座を受講しました。 最初はこんなに苦戦すると思っていなかったので、諦めそうになった時もありましたが、予備校の先生に相談したりと自分と真剣に向き合って6回目でようやく合格をしました。 また、大学時代に薬剤師の資格を取得していたおかげで、選択科目は免除することができ気持ち的にも最後安心感がありました。 今までの自分の専門知識を活せる上、在宅でお仕事ができる弁理士のお仕事は、結婚や出産などライフスタイルが変化しても長く続けていける仕事です。 手に職をつけることができ、諦めずに頑張って本当に良かったと思っています! |
特許事務所で働きながら資格取得を目指すことについて
よく、弁理士を目指そうとしている方々から
「働きながら弁理士を目指すなら、特許事務所で働きながら勉強した方がいいですか?」
と聞かれることがあります。
※資格がなくても「特許技術者」として働くことができます。
この質問については、結論から言うと「どちらとも言えない」です。
特許事務所で働きながら資格取得を目指すことについて、メリットとデメリットを紹介していきます。
メリット1:弁理士試験受験生を応援してくれる環境
特許事務所は、弁理士資格取得を推奨している場合がほとんどのため、受験生への配慮があります。
例えば、
- 弁理士資格を目指す特許技術者には残業をさせない
- 弁理士試験前に、特別に休暇をもらえる
など、一般企業にはない待遇をしてもらえる特許事務所があります。
メリット2:資格取得後のキャリアにおいて有利
もう一つのメリットは、資格取得後の転職活動が有利になることです。
特許事務所の求人は、未経験者は35歳程度までと募集に年齢制限がある場合が多く、実務経験者が優遇されることも多いからです。
また、初年度の年収は未経験の場合、400万円前後が相場ですが、特許技術者としての経験があれば500万円以上の待遇が受けられることも。
加えて、資格と実務経験を持っていることで独立しやすくなります。
野心のある方や独立を目指されている方は、早いうちから特許技術者として勤務しておくとメリットが多いかもしれません。
弁理士の年齢制限についてや、弁理士と特許技術者の待遇などの違いについては以下にまとめています。
デメリット:実務経験と試験内容はあまり結び付かない
実務経験があるからといって、試験で有利になるとは限りません。
特許技術者のメイン業務は明細書作成です。
弁理士試験の知識はこの明細書作成の際よりも、係争処理など、経験豊富な弁理士が関わるべき業務と、深い結びつきがあるからです。
実際に、特許技術者として特許事務所に勤めていても、弁理士試験を何回もチャレンジして合格していく方がほとんどです。
そのため試験勉強中に環境を変えるよりかは、慣れた環境や生活リズムで勉強に励んだ方が良いとの意見もあります。
まとめ
以下が本記事のまとめです。
- 80パーセント以上の方が働きながら弁理士資格を取得している
- 働きながら受験勉強をするには職場の選び方が重要となる
- 働きながら合格した方はさまざまな工夫をしていた
- 特許技術者として働くことにはメリットがある
- ただし特許技術者として働くことで試験に有利になるわけではない
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