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弁護士は英語力が必要?メリットや英語ができない場合のキャリアも解説

弁護士は英語力が必要?メリットや英語ができない場合のキャリアも解説

by 大阪弁護士会所属 弁護士M

弁護士(14年目)

担当職種:
  • 弁護士
弁護士は英語力が必要?メリットや英語ができない場合のキャリアも解説

本記事では、法律事務所に勤務している弁護士14年目の私から、「弁護士に英語力は必須なのか」「必須であればどれくらいの英語力が必要か」を解説します。

法律事務所や企業によっては、募集要項に「TOEIC何点以上」「英語を用いた実務経験歓迎」といった条件が書かれている場合があります。実際に、英語力がないと就職や転職は難しいのでしょうか?

本記事ではそのあたりも含め、弁護士と英語力の関係性について解説します。

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英語力は弁護士に必須なのか

結論、弁護士として働くにあたって英語力は必須ではありません。弁護士の誰しもが、英語力に優れているわけではないです。

裁判所法では、「裁判では日本語を用いる」と定められおり、裁判において英語力は必要ありません。

また、弁護士の一般業務である

  • 金銭請求
  • 相続や離婚等の一般民事事件
  • 犯罪などの刑事事件

などは、ほとんどが日本人間の争いであり、英語力を求められる場面は少ないです。

しかし、取り扱う業務によっては、英語力があった方が良い場面も多々あります。英語力がないと、弁護士としてのキャリアが狭まってしまう可能性もあるでしょう。

英語力が求められる状況・条件・業務・キャリア

弁護士の業務において、英語力が求められるケースを具体的に見ていきましょう。

該当するキャリアや職種・業務を希望する場合には、ある程度の英語力を身につける必要があります。

渉外弁護士

渉外弁護士は、ある程度の英語力が求められます。

法律事務所の業務としては、顧問先の契約書作成、チェックがあります。顧問先が海外の事業者と取引を行う場合、契約書は基本的に英文です。

海外の事業者との取引が発生する案件を「渉外案件」と言い、そうした顧問先を多くもつ法律事務所を渉外事務所、弁護士を渉外弁護士と言います。

渉外案件が主な業務になるのであれば、英語力は必須といえるでしょう。英文契約書の修正・確認を行うためには英語力が欠かせません。

また、修正事項等について、英語で相談できた方が良いケースもあり、リスニング・スピーキング能力も必要です。

渉外事務所ではアソシエイト弁護士を採用する際に、「TOEIC何点以上」という条件を課していることがあります。

また、渉外事務所ではなく一般の法律事務所でも、突発的に顧問先から海外の事業者との英文契約書のチェックをお願いされる可能性があるでしょう。

企業法務系の法律事務所

企業法務系の法律事務所は、高い英語力が求められます。

企業法務を扱う法律事務所では、基本的に「海外案件」や「英語案件」があるからです。

そのような案件は、名前の通り英語を用いて業務にあたるので、英語力が必須となります。

企業法務弁護士について詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。

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クライアントが外国人である場合

クライアントが外国人である場合、当然ながら英語力が求められます。

例えば、英会話スクールの講師をされている外国人の方が、労働問題で法律相談に来るというケースがあります。

その方が英語でのコミュニケーションを主とする場合、当然ながら英語ができた方が良いです。

特に、法律相談のような高度な内容であれば、日本語では思うように意思疎通ができない可能性もあります。この場合には、英語でコミュニケーションが取れた方が弁護士としても、相談者の意向が理解しやすいでしょう。

また、刑事国選事件で、外国人の被疑者・被告人を担当することもあります。国選事件の場合は、通訳の方がついてくれますが、拘置所での接見等には通訳の方と時間をあわせなければならず、また、接見中も通訳を介することで通常よりも多くの時間を要することになります。

近年では外国人労働者の数も増えてきていますので、外国人がクライアントになるケースは増加傾向にあると言えます。

企業内弁護士(インハウスローヤー)

企業に就職する弁護士(企業内弁護士・インハウスローヤー)になる場合、英語力は必須といえるでしょう。

日常業務の中で、海外企業との交渉や契約書のやりとりが出てくるからです。

現在の実情としては、インハウス弁護士を雇用する会社は上場しているような大企業が多く、そうした大企業では、国内業務のみということは少ないと思います。

企業内弁護士は弁護士の就職先の中では「残業が少ない」「給与が安定している」ため、希望する方が増えてきています。

企業内弁護士に就職・転職する際に求められるスキルやなり方・年収については以下の記事でも解説しているので、あわせてご覧ください。

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外資系法律事務所

外資系法律事務所に勤める弁護士は英語力が必要です。

外資系法律事務所とは、

  1. 海外に拠点がある事務所の日本支部
  2. 海外の事務所と提携した国内の法律事務所

などが、外資系の法律事務所として分類されます。

業務内容は、基本的に「国際的な法律の案件」を受け持つことが多いです。

一般的には、「一般民事」と「法人向けの企業法務」に分かれますが、外資は国際系の企業法務の案件を扱います。

外資系だと必須事項になる英語力は、『ビジネスレベルで英語が使える』と記載されている求人が多いです。

受かるためには、TOEICは最低でも900以上、TOEFLでは100以上くらいあれば、外資系への転職として強みになるでしょう。

外資系法律事務所の待遇や働き方などの詳細については、以下の記事で詳しく書かれているので、気になる方はあわせてご覧ください。

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英語力を身につけるメリット

ここまで、英語力が求められる業務や職種・ケースについてお話してきました。

つまりまとめると、英語力を身につけると以下のようなメリットが生まれることになります。

業務の幅が広がる

英語ができるようになると、業務の幅が広がります。

英文契約書の作成、チェックもそうですが、外国人労働者問題を扱えるようになったりと、英語ができることで顧客の幅が広がりますので、英語力を身に着ければ、取り扱える業務の幅が広がります。

年収・収入が上がる

業務の幅が広がることとつながりますが、取り扱える業務が多くなるということは、それだけ依頼が多くなり、収入アップにもつながります。

英語ができることで、外国人の顧客が新しい外国人を依頼者として紹介してくれたりするなど、結果的に業務の幅の広がりや収入アップにつながるわけです。

ただし、英語力ができるかできないかによって、年収に大きな差ができるかというと、そうではありません

英語が不必要な事務所でも年収1,000万円を超える場合もあれば、英語必須の事務所でも年収1,000万円を超えないケースもあります。

「なんとなく年収が上がりそう」という理由で英語を身につけようとする場合は、英語力がそこまで給与に影響を与えないということは念頭に置いておきましょう。

時間短縮になる

刑事国選事件の被疑者・被告人が外国人である要通訳事件や、例えば、通常の訴訟事件の中でも、英語で会話されている録音テープが重要な証拠となり日本語訳しなければならないなど、一般の事件の中でも英語が必要な場面と言うのは想定されます。

そうした場合に、通訳の方に翻訳をお願いすると費用が掛かるとともに(国選事件の場合は費用負担はありませんが)、何より時間がかかります。

拘置所に行って面会する場合でも、こちらの質問を英語に翻訳してもらい、質問に対する回答を日本語に翻訳してもらったりなど、通常の倍くらいの時間がかかってしまいます。

英語力が身についていれば、こうしたことが全て一人で行えるので、時間短縮につながります。

弁護士は日常業務に時間を取られていますので、できるだけ時間短縮が図れたほうが良いです。

そうした点からも、英語力は身に着けておいた方が良いでしょう。

求められる英語レベルはTOEIC800点くらい

明確な基準はありませんが、一般的には、TOEICで800点以上あれば、短文も長文も比較的細部にまで聞き取ることができ、意見を述べたり、複雑な要求にこたえることができるとされています。

法律的な問題は、その性質上、内容が複雑にならざるを得ませんので、日常会話ができるレベル程度では、やや不安です。

法律的なことまで英語で聞き取り、応えることができるというためには、800点以上は欲しいところです。

英語力を活かしてキャリアアップした弁護士の転職成功例

弁護士専門の転職サイト「リーガルジョブボード」では、英語力を活かしてキャリアアップできた弁護士の方が複数いらっしゃるようです。

その中の方で例を挙げますと、28歳の弁護士が、英語力を用いて年収アップの転職に成功しました。

  • 年齢:28歳
  • 前職(年収):弁護士(420万円)
  • 転職後の職種(年収):渉外弁護士(700万円)

持ち前の英語力を活かして渉外弁護士へとキャリアステップしたこちらの方は、年収の大幅アップに加え、業務の幅も広がりさらなるスキルアップが見込めると感じているようです。

英語力はあるに越したことはないと言えます。

弁護士に必要な英語力を身につける方法

なんといっても慣れることでしょう。

おそらく弁護士になろうとする人は、大学受験も努力されてきた人が多いと思うので、座学としての英語はそれなりに身についていると思います。

後は実践的に慣れていくことが必要でしょう。

最近では、オンラインで外国人と会話できたりするサービスもありますので、こうしたものを利用して英語に慣れることが必要と考えます。

文法や単語を深める勉強はそれからでも十分かと考えます。

英語力がなくても就職・転職は十分に可能

結論を申し上げますと、英語力がなくとも弁護士として就職・転職することは十分に可能です。

英語力があれば給与面やスキルアップの観点ではメリットが多く存在しますが、英語力がないからと言って一切仕事ができないということはまったくもってありません。

ただし、英語ができる弁護士の方が市場価値が高く、より求められる人材となることは間違いないです。

英語力があまり求められない弁護士の職場

結論、英語力が求められる弁護士は「渉外弁護士」「企業法務弁護士」「外資系法律事務所」「企業内弁護士」です。

つまり、これら以外は英語力がなくても業務にあたることができます。

英語力がなくても対応できるのは「渉外事件を扱わない普通の法律事務所」です

「金銭請求」「相続や離婚などの一般民事事件」「犯罪などの刑事事件」を扱う法律事務所ですね。

いわゆる「一般的な・ごく普通の法律事務所」です。

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この記事の執筆者

大阪弁護士会所属 弁護士M

弁護士(14年目)

担当職種:
  • 弁護士

大阪弁護士会に所属する、登録14年目の弁護士。大阪大学法学部卒業後、一般民事事件を主に取り扱う法律事務所に勤務。弁護士業務に従事しつつ、法的内容を扱う記事監修も行っている。

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