令和3年 司法試験の合格発表
前年度はコロナ過のため試験日程の大幅な変更がありましたが、令和3年は通常通りに行われております。
今年の司法試験合格発表は9月7日(火)です。
合格後は多くの方が司法修習生として約1年間もの間、法曹としての知識や考え方を学びながら身につけます。
例年合格発表日~約1週間の短期間で修習生登録の出願手続きを行う必要があり、今年は令和3年9月14日(火)が司法修習出願の締め切りですので、早めに必要書類などの準備を行いましょう。
司法修習の出願手順や注意
先ほどもお話しましたが、司法試験が終わると次は司法修習生になるための申し込みをします。
今年は令和3年9月14日(火)が司法修習出願の締め切りです
出願から採用までの約2か月間の間に、教材や事前課題が送付されます。
届いてから発令までに、おこなうようにしましょう。
司法修習登録申請に必要な書類
提出する書類は以下の通りです。
- 司法修習生採用選考申込書(署名・押印・写真貼付)
- 司法試験合格証書のコピー
- 戸籍抄(謄)本又は住民票の写し
- 学校の成績証明書
- 学校の卒業(退学)年月を証する書面
- 退職証明書
- 資格の登録抹消証明書等
- 健康診断票
- 実務修習希望地調査書
- 身上報告書2部・カラー写真5枚(縦4㎝×横3センチ)
- 入寮許可願(入寮希望者のみ)
- 84円相当の切手を貼付した返信用封筒(入寮希望者のみ)
また、すぐ提出できなくても、後から追完できる書類は下記のものです。
- 学校の成績証明書
- 退職証明書
- 再検査等結果証明書
郵送で受付をしていますが、「書類が届かず司法修習を受けられない」ということが無いよう、簡易書留郵便を利用して確実に届けることをおすすめします。
簡易書留郵便は、制限はありますが追跡機能、賠償額と普通郵便よりも安心にお任せすることができます。
申込用紙の入手方法
司法修習登録申請の申込用紙は下記の方法で入手できます。
最高裁判所のサイトからダウンロード
最高裁判所、高等裁判所(大阪・名古屋・広島・福岡・仙台・札幌・高松)へ来庁し入手
郵送で取り寄せ(返信用封筒を最高裁の担当部署へ請求)
書類作成の注意事項
当たり前ですが、記載する内容は正確に記入します。
もし、故意でなくとも間違っていると、虚偽の記載をしたと取られ司法修習生として採用後でも取り消しになることがあります。
また、様々な種類の書類を用意する必要があるので、合格発表までにある程度の書類を集めておくとスムーズに申請をおこなえます。
用意する書類は多いですが、今後はもっと多くの書面に向き合います。
丁寧に申請書類を仕上げ、法律に携わる職業に就く第一歩としてください。
修習申請が拒否される可能性
司法試験に合格したからと言って、誰でも司法修習生になれるとは限りません。
例えば、
- 現在病気である
- 禁錮以上の刑に処せられたことがある
- 成年被後見人・被保佐人である
- 破産手続開始の決定を受けて復権を得ていない
上記のような理由で、申請拒否される場合があります。
自身で、理由が明確になることばかりですが、今一度確認しておきましょう。
司法修習
司法試験合格後、弁護士・検事・裁判官として働くためには、約1年間司法修習生として学ぶ必要があります。
修習参加者数は毎年1,500人程度で、ほとんどの合格者は司法修習にすすみます。
修習は、全国各地にある修習地から選択した場所での受講です。
時期は、例年司法試験合格発表後の12月から翌年の12月まで行われます。
今年はコロナ過で、試験自体がずれ込んでいますので、司法修習の開始時期は2021年4月頃になるのではないかと予想されます。
司法修習のカリキュラムは下記のとおりです。
- 導入演習
- 分野別実務修習
- 集合修習
- 選択型実務修習
カリキュラムを終えると、考試(二回試験)に合格しなければなりません。
導入演習
導入演習は、修習生全員を集めて行われます。
約3週間の座学を中心に、1年間行られる修習のガイダンスや案内です。
通勤が難しい修習生は、寮に入って修習を受けることが可能。
この導入演習が終われば、修習生は全国にある各修習地へ散らばるので、全修習生に会える機会は導入演習しかありません。
友人をつくったり、コニュニティーを広げるなら導入演習のタイミングがベストです。
分野別実務修習
分野別実務修習は、司法修習生のカリキュラムの中でも大半を占める修習です。
内容は、民事裁判・刑事裁判・検察・弁護の4科目。
各2ヶ月を1クールとして実施され、判決書を起案したり、裁判の立会をし、弁護実務を体験できます。
選択型実務修習
選択型実務修習とは、裁判所・検察庁・弁護士会が提供するプログラムの中から、選択して受講できます。
例えば、検察庁を選択すれば、法務局・科捜研などの見学、法テラス業務の体験など実務に近い内容を学びます。
実際、将来はどのような道を進むのかを考え、プログラムを選択しましょう。
AとBの二つの班に分けられ、集合修習と交互に行われます。
集合修習
集合修習は、司法修習の総まとめのようなもので、民事裁判・民事弁護・刑事裁判・刑事弁護・検察実務について、実際の記録をもとに事件処理を総合的に学びます。
選択型実務修習と同様、AとBの二つの班に分けられます。
集合研修と選択型実務修習を班ごとに交互におこなわれます。
考試(二回試験)
修習がすべて終わると、考試(二回試験)を受けます。
二回試験は、例年11月下旬に5日間おこなわれます。
今年に関しては、コロナ過で修習の日程は決定しておりません。
試験はハードで、10:20~17:50(昼食休憩1時間)までおこなわれ、科目は修習で学んだ民亊裁判・刑事裁判・検察・民事弁護・刑事弁護の5科目です。
内容は、約100ページ以上もある事件記録をもとにする事件処理の起草。
ボリュームが多く、集中力だけではなく、体力的にも厳しい内容です。
採点は、【優・良・可・不可】と評価をされ、不可が1つでもあれば、不合格になります。
司法修習にかかる費用
司法修習生になるためにかかる費用は下記のものです。
- 健康診断費用(5,000円程度)
- 修習にかかる交通費、宿泊費(場所によるが、数万円段位でかかる可能性もある)
- 参考書代(毎月8,000円程度、年間では10万円前後かかります。)
司法修習生は、兼業・副業禁止されています。
給費はありますが、貯蓄を用意しておいた方がいいです。
司法修習生の給費
司法修習生の給費は、月額一律13万5,000円です。
2017年に裁判所法が改正され、給付制度が復活しました。
また、単身で賃貸物件を借りている修習生には、上限3万5,000円居住手当が支給されます。
給費が支給されていなかった期間もあり、修習生は経済的負担が大きかったのですが、給費の支給で安心して司法修習を受けることができます。
弁護士登録費
修習にかかる費用ではありませんが、実際弁護士職に就くためには、弁護士登録をしなければなりません。
日弁連・各地の弁護士会どちらの登録も必要です。
費用は下記の通りです。
- 日弁連の名簿登録費用3万円
- 各地弁護士会の入会金
- 資格登録免許税6万円
各地弁護士会入会金は、最安値の東京3万円~最高値の奈良60万円と差があります。
弁護士として登録されるためには、すべてを合わせると12万円~69万円の費用が必要。
この費用は、弁護士として働くための初期費用です。
何度も払う費用ではありません。
弁護士年会費
弁護士を続けるためには、弁護士会費が必要です。
日弁連の会費は月1万4,000円、各地の弁護士会費1万2,000円~6万円かかります。
50万~100万円ほどが毎年必要になります。
まだ、年収が少ない若手弁護士にとって大きな負担になるため、若手弁護士に対しては会費減免措置が取られます。
所属する地域により、措置が異なりますので、しっかり調べておくのが良いでしょう。
司法試験合格後はすぐに司法修習に行かなくてもよい
司法試験合格後、ほとんどの方はそのままその年の司法修習を受けます。
しかし、司法試験に合格していれば、その年に司法修習を受けなければならないという決まりはありません。
中には、次年度の1年3ヶ月後に司法修習を受ける方が一定数います。
例えば、学生は司法試験合格したのであれば、学生期間がまだ残っている方もいます。
修習生として、繋がりはとても大切ですが、学生時代の人脈はその時しか作れません。
また、どの仕事についても法律が関わる場面が多くなるため、いろいろな進路へ進む人材と知り合える学校は良好な人脈の種をまいておく場としてとてもおすすめです。
残りの年数学生生活を満喫しながら、多くの人脈とつながりを持つことも弁護士として成功するために有効です。
司法修習を受けないとどうなる?
司法修習を受けないと、法曹(検事・裁判官・弁護士)になることができません。
法曹になりたい場合は司法修習を受けることは必須なので、いずれは受けるようにしましょう。
ただし法務部への就職は、司法修習を受けていなくても可能です。
司法試験合格者の就職先
司法試験合格後の進路は、大きく分けると下記の4つ。
- 法律事務所
- 企業内弁護士
- 裁判官
- 検事
以前は弁護士として法律事務所で働くことが当たり前でしたが、時代の変化に伴い、司法試験合格者の就職先の選択は拡がっています。
近年では、インハウスローヤーとしての働き方も注目されており、少しずつですが求人が増えています。
法律事務所
司法試験合格者が選択する一番多い就職先は法律事務所です。
司法試験受講者は、まず法律事務所へ入社することを想定して資格取得を目指している方がほとんど。
法律事務所は扱っている案件のジャンルやその割合によって特徴がさまざま。どこでどんな経験を積むかが長期的なキャリアを考える上で大切になってきます。
もし法律事務所へ就職する場合は、事務所選びが非常に重要です。
事務所選びを失敗すると、思い描くキャリアを積むのに遠回りをしてしまいかねません。
事務所選びのポイントについては下記で解説しています。
また法律事務所の規模によって働き方や待遇に違いがあるため、司法修習生の中には大手事務所や五大法律事務所を検討される方もいらっしゃると思います。
しかし求められている人材は事務所規模によって違いが出ている場合があります。
事務所大手や中小の違い・五大法律事務所の特徴や就職するのに必要なスキルは以下の記事でまとめているので、あわせてご覧ください。
また、年収が高い法律事務所は大手や五大以外に「企業法務系の事務所」もあります。
五大法律事務所の就職難易度は高いので、年収の高い事務所の選択肢として企業法務弁護士も検討すると良いでしょう。
企業内弁護士(インハウスローヤー)
司法試験合格者の中には、企業内弁護士として入社する方もいます。
所属が一般企業となるため法律事務所と比べると残業が少ない・福利厚生などの待遇が安定しているなどのメリットがあることが多いので、ワークライフバランスを整えたい方に人気の就職先です。
企業に入社する場合、「法律に詳しい法務として法務関係に詳しい方を雇いたい」「弁護士資格を取得している方を企業所属の弁護士としておきたい」など求めている人材は様々。
法科大学出身者や司法書士資格取得者などを含めライバルにあたる方が多いため、倍率が高いこともあります。
また企業内の核となる部分を任されることがあるため、「経験者」を求める企業が多いのは事実です。
とはいえ新卒でインハウスローヤーになることは可能なので、新卒で就職しようと考えている方は以下の記事をご覧ください。
また年収についてですが、インハウスローヤーの平均年収は500〜750万円です。
役職がついてくると、年収1,000万円を越える方もいらっしゃいますが、初任給で言うと400万円程度。
しかし中には、弁護士資格を持っている方を重宝する企業があり、そのような企業は司法修習後すぐの弁護士でも年収500~600万円を初任給として提示されることがあります。
ただこのケースは稀で、基本的には無資格者の法務と同等の金額になることがほとんどです。
裁判官
司法試験合格後、裁判官を目指すこともできます。
1年目から年収約600万円と高給与を目指すことができますが、難関資格と言われる司法試験を合格した中で、さらにまじめで優秀な人材のみがつくことができる職業です。
優秀な人材に積極的に声がかかるといわれており、誰しもがなれるわけではありません。
司法試験の順位がいいのはもちろんのこと、修習中の試験も上位であることは必須です。
補足:裁判官のキャリア
裁判官に任官されると、「未特例判事補」になり、見習いとして学びます。
まだ一人で裁判はおこなえず、裁判長も務められません。
任官から5年で「特例判事補」となります。
特例判事補になると、一人で裁判をおこなえるようになります。
10年目になると「判事」になり、一人前といわれ、その後は「高等裁判所長官」「最高裁判所判事」「最高裁判所長官」とキャリアアップをしていくことがあります。
しかし、「判事」以上のキャリアを積む人はほんの一握りです。
検事
検事になるという道もあります。
年収は500~600万円で、部長クラスになると1,000万円を超える年収になる傾向にあります。
検事になるためには司法修習生考試合格後、検事採用面接を受けなければなりません。
判断基準として、
「能力・適性・人格・識見に優れた方を総合的に判断した上、採用されます」
とされており、資質を面接では見極められます。
補足:検事としてのキャリア基本的には下記の順でキャリアを積んでいきます。
- 新任検事
- 新任明け検事
- A庁検事(ここまでで5年程度)
- 三席検事
- 次席検事
- 検事正
- 検事長
- 検事総長
新任検事、新任明け検事は力をつける期間です。
5年目以降になると、一人前の検事として認められる存在になります。
司法試験に合格するなど、法律の知識があれば他の職場でも活躍することができます。
下記の記事ではその他の就職についても解説していますので、ぜひご覧ください。
就職活動のタイミングやポイント
毎年、すべての結果が出る9月に就職活動をスタートしている印象です。
4・5大法律事務所を狙っている方や、今回の試験に自信のある方であれば、短答試験合格後の8月から就職活動を始めて、早々に内定をもらっている場合があります。
しかし急がないと内定をもらえない、ということはありませんの落ち着いて就職活動をスタートさせてください。
司法修習生が就職活動をスタートさせる方法として下記のものがあります。
- 論文式試験合格発表後に開催される合同説明会に参加する
- 司法修習時に転職エージェントや転職サイトを利用する
就職活動には、情報を集めることが大切になりますので、説明会など様々なものに参加する司法試験合格者が多いです。
また、転職エージェントを利用して求人の動きや情報をもらい、自分に合う事務所を紹介してもらうなど、いろいろな角度から就職活動を進める方法があります。
本格的な就職活動には少し早いかなと感じている方も、求人サイトでの情報集めは早めに行うことをお勧めしています。人気の求人は応募数が多いですので、すぐに募集が終わってしまうケースもあるためです。
できる限り、多くの方法で就職活動をしていくことが、自身に合う事務所へ就職するためのポイントです。
就職活動に向けて準備すべきもの
就職活動では情報集めだけではなく、準備する必要があるものがあります。
- 司法試験の成績表のコピー
- 大学、法科大学の成績表
- 履歴書、職務経歴書
以上の準備はしておいた方が良いでしょう。
法律事務所は成績を気にする事務所があり、履歴書や職務経歴書と一緒に司法試験や大学などの成績表を求められるケースも多くあります。
そのため事前に準備をしておきましょう。
また履歴書・職務経歴書についてですが、あなたの「第一印象」を決定づける大事な書類です。
面接官は現役弁護士になるため、志望理由+自己PRは説得力を持たせなければ目に止めれくれません。
なので応募事務所ごとにしっかりと作り込む必要がありますが、いざ応募書類を作ろうとしてもなかなか難しいといった声もよく聞きます。
そんな時はぜひ我々エージェントにご相談ください。履歴書や職務経歴書制作のレクチャーやあなたの強みを明確にするお手伝いをいたします。
履歴書や職務経歴書の添削をしてほしい、模擬面接など対策をしてほしいなどがありましたらぜひお気軽にお問い合わせください。
司法試験が不合格だった方の進路や就職
もし、司法試験に落ちてしまっても、法律の知識を学んだことは就職に役立ちます。
ロースクール卒業生や、もし短答式は受かっている場合でも評価される場面も多いです。
不合格だった場合の進路や就職は下記のようなものがあります。
- 次回の司法試験合格を目指す
- 司法書士など、同じ領域の違う職業を目指す
- 法的知識を求められる、企業法務へ就職する
司法試験には、法科大学院修了または司法試験予備試験合格から5年間で5回と受験回数に制限があります。
受験回数に余裕がある方は、もう一度司法試験に挑戦する方もいますが、受験回数の上限に達してしまった方は、違う道を選択しなければなりません。
おすすめなのは、「企業の法務部」への就職です。
企業の法務部は、法律の知識が求められるので、司法試験のために学習した内容が役に立ちます。
また、近年法務部の求人数は増加傾向にあり、注目されている職種です。
司法修習生こそ転職エージェントを利用するのがおすすめ
司法試験合格前後は、新人弁護士を取りたい事務所が数多く求人を出します。
年間で見ても、一番求人数が増える時期ですが、求人は多いからと言って誰でも希望する事務所に入所できるわけではありません。
それは、人気の事務所に応募が殺到しているのが原因の1つです。
希望する事務所に入れるかどうかは、まず書類選考に通るかどうかが重要。
転職エージェントを利用すると、書類選考に通過しやすくなるのをご存じですか?
理由は下記の3つです。
- 履歴書や職務経歴書を添削するため
- 「求職者様の推薦文」を作成するため
- 大量に来る書類に埋もれないよう配慮するため
特にこの時期、人気の事務所は多くの履歴書が届くため、大量に来る書類に埋もれて履歴書を流し見されるケースが多いです。
転職エージェントを利用した場合、書類を送ってから、電話などで後追いをし、しっかりと確認してもらうよう配慮します。
そのため、流し見され書類選考に引っかからなかったといったことを極力減らすことができます。
転職エージェントを利用するメリット
転職エージェントを利用するメリットは、書類選考を通過しやすくするだけではありません。
エージェントを利用するメリットは下記のようなものもあります。
- 複数の求人の選考を効率よく進められる
- 業界の専門知識や裏事情について把握しながら就職活動を進められる
- 給料面や入社時期などの交渉が可能
- 入社後のミスマッチを防げる
- どの事務所・企業が最善の転職先なのか判断できる
- 面接後のフィードバックを受けられる
上記の詳しい解説は下記の記事でしています。
まとめ
今回の記事のまとめは以下のとおりです。
- 就職活動を始める時期は、すべての合格がでる9月下旬ごろ
- 4、5大法律事務所を希望している場合は、すぐに就職活動を始めた方がいい
- 不合格だった場合は、企業の法務部がおすすめ
- 司法修習生こそ転職エージェントを利用するのがおすすめ
弁護士や法務部の求人状況を把握したい場合は、弊社の弁護士・法務専門の転職エージェントサービスLEGAL JOB BOARD(リーガルジョブボード)にお気軽にご相談ください。
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