司法書士

組織内司法書士の制度発足への道!法務部への転職と企業側から見た司法書士

by 司法書士法人グラティアス 志村直也

代表所長 司法書士

担当職種:
  • 司法書士

こんにちは。司法書士の転職エージェント「リーガルジョブボード」です。

本記事では、司法書士と企業法務について紹介します。

なお、今回の記事で言う企業法務とは、司法書士事務所の取扱業務としての企業法務(商業登記、組織再編、契約書作成等)ではなく、

一般企業に所属して行う企業法務(法務部、組織内司法書士)を中心に紹介させていただきます。

  • 「司法書士として法務部に所属できるのか?」
  • 「法務部への就職の際の年収は?」
  • 「企業から求められる司法書士になるためには?」
  • 「組織内司法書士ってなに??」

といった疑問をお持ちの方はぜひご参考にしてみてください。

弊社リーガルジョブボードでは司法書士大歓迎の法務部求人を取り扱っております。ぜひご覧くださいませ。

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企業法務とは?

企業法務とは、企業活動に関する法律事務全般を指します。

具体的には、契約書の作成・チェック・締結、株主総会の実施、その他の法律問題などについて対応する活動となります。

昨今、企業でのコーポレートガバナンスへの注目度の高まりや、コンプライアンスの遵守は大きな課題となっております。

中小企業であっても法務部の設置や法務人材の需要は増えている一方で、法務分野で確かな知識のある人材は不足している状況です。

そこで、法律相談や予防法務(登記業務)も行える司法書士は、長期的なスタンスで企業の法的トラブルを未然に防ぐことも可能である職種であると言えるため、司法書士の企業法務への注目度は増しています。

企業法務での司法書士の役割

企業法務には大きく分けて、1対処法務、2予防法務、3戦略法務の3つがあります。

その中での司法書士の役割を紹介します。

対処法務

対処法務とは、企業にトラブルや紛争が生じた際にそれを対処する法務のことです。

紛争=裁判とイメージされるとおり、通常は弁護士が担当することが多いでしょう。

しかし、司法書士であっても、認定司法書士であれば簡易裁判所における訴額140万円以下の裁判業務を行うことができるため、企業の対処法務に携わることができる機会もあります。

特に中小企業で一般顧客をユーザーにしている企業では、顧客とのトラブルや紛争の訴額が140万円以下である場合は少なくありません。

予防法務

予防法務とは、契約書の作成等を通じて、事前に企業のトラブルを防止することを目的とした法務です。

この分野においては、登記の専門家として司法書士にも馴染みがある分野です。

会社登記はもちろん予防法務の一翼を担う業務でありますし、昨今のコンプライアンス遵守の重要性の注目も相まって、民法、会社法、商業登記法等に精通した司法書士の需要は今後も高まっていくことが予想されます。

戦略法務

戦略法務とは、買収や上場等の企業の方向性(経営戦略)を導く法務です。

最近では、対処法務や予防法務と比べて需要が高まっています。

事業承継、M&A・組織再編、株式公開、株主総会対策などの様々なケースにおいて、弁護士、会計士、税理士などの他士業と連携して進めていく必要はありますが、これらは最終的に登記が絡むことがほとんどです。

また、事業承継においては、成年後見、遺言、贈与、家族信託などの提案をしつつ問題解決を導く機会も多いため、これらの専門家である司法書士への需要はやはり高いものと考えられます。

企業側から見た司法書士の評価

結論から言うと、企業から見た司法書士への評価は高くはありません。

高くないと言いますか、司法書士の法律実務家としての側面を企業側に認知してもらえていないのです。

良くも悪くも司法書士は登記の専門家というイメージが強いからでしょう。

もちろん中には司法書士資格が応募条件になっている企業の求人もありますが、やはり弁護士のネームバリューにはかないません。

ただし、他士業(弁護士、税理士など)からの評価は高いです。

それは、司法書士には法律の知識があり、法律知識に基づいた仕事の経験があることを彼らが知っているからです。

そのため、司法書士が企業法務を扱うことができる法律の素養があることを企業にも理解してもらうために、司法書士個人としてではなく組織としての努力が必要でしょう。

こちらについては、後述の組織内司法書士について紹介します。

企業から評価を得られるスキルや経験は?

商業登記の業務経験があるに越したことはないですが、企業側からすれば、登記の知識はそこまで重要視していないことも多いようです。

登記は結果です。

言い換えれば、登記申請ができるということは全ての手続きが終わっているということです。

すなわち、企業側からすれば結果ではなく、その経過がより重要であるからだと考えられます。

必要な経験

登記実務は法律の知識がベースになっており、日々法律を使って仕事をしていることの理解を求めつつ、

  • 会社法務関係(議事録や契約書作成、株主総会招集手続き、組織再編、募集株式発行など)の実務経験
  • 裁判業務などの実務経験

上記の経験があれば、企業へのアピールポイントになるでしょう。

必要なスキル

企業から評価を得るためには、上記の経験や知識だけではなく、人間性も含めた総合力が求められます。

そのため、日々の業務の中で一つ一つの仕事を丁寧に行うことはもちろんのこと、下記スキルも求められます。

  • 単なる手続き代行だけではなく、いつでも能動的に助言、提案ができること
  • 英語(英語の仕事がしたいという気持でも良いです)
  • 他士業や法務部員との折衝におけるコミュニケーション能力

上記スキルも持ち合わせていれば、企業側からの評価もぐっと上がるものと思います。

なお、資格者の専門的知識に期待している企業にとっては、上記のスキルや経験があるに越したことはないですが、これらがすべてではありません。

企業ごとのニーズもあるでしょうから、あくまで参考としてお考え下さい。

組織内司法書士の制度発足への道

企業内弁護士という言葉が一般化してきた昨今において、日本組織内司法書士協会が、

「組織内司法書士(司法書士事務所を除く組織に属する司法書士を言う。)を組織の所属員と司法書士との兼業としてではなく、「組織に所属する司法書士」として確立することで司法書士またはその有資格者に新たな社会貢献の機会を提供し、もって制度としての司法書士の発展に寄与することを目的」として活動をしております。

現在、「組織内司法書士」となるには、事務所設置義務や依頼者の応対義務などの司法書士法をはじめとする様々な制約があり、司法書士登録をしたまま企業に属することは難しいのが現状です。

そのため、司法書士登録をしたまま企業の法務部などに属するためには、兼業という形を取らざるを得ないのです。

しかしながら、司法書士登録をしていれば、各司法書士会・支部の研修を受けられるなど、所属する組織にも有用な制度や様々な利点があります。

そうした観点からも、日本組織内司法書士協会の活動は、司法書士制度をより社会的に意義のあるものにしていくものです。

興味がある人は、ぜひ入会してみてください。

法務部で活躍する司法書士の年収事情

日本組織内司法書士協会によれば、アンケート調査の実施の結果は以下のとおりです。

1位 「750万円~1000万円未満」で、全体の32.8%

2位 「500万円~750万円未満」で27.6%

3位 「1,000万円~1,250万未満」で19%

※「1,250万~1,500万円未満」の高額年収取得者も10.3%存在。

※年収1,000万円を超える会員は合計で全体の29.3%。

さらに、組織内弁護士との比較においても、組織内弁護⼠には年収1500万円を超える年収の方が1割程度いるものの、平均的な年収においては、組織内弁護士と組織内司法書⼠有資格者には大きな差はありません。

日本組織内司法素子協会 組織内司法書士の労働条件(収入)より

いかがでしょうか?

司法書士は一般的に勤務司法書士で平均年収400万程度、開業司法書士で年収600万円程度と言われております。

もちろん開業司法書士の場合は、会社員とは必要経費の考え方が異なる点も多いため、一概には比較できませんが、組織内司法書士の年収は概ね高水準であることがわかります。

まとめ

登記案件の減少、AIやテクノロジーにおける昨今の司法書士業界において、安定・継続して高収入を得たい場合には、企業内で働くことも資格者の有力な選択肢といえるのかもしれません。

ただし、司法書士として企業内で働くことは、司法書士事務所への就職と異なり簡単なものではありません。

求人件数もそうですが、求人のライバルが弁護士有資格者などになるからです。

弊社リーガルジョブボードは、司法書士専門の転職エージェントサイトです。

司法書士事務所だけでなく、一般企業(主に法務部)の求人など、最新の司法書士求人を定期的にご紹介します。

そのため、一般企業への転職に興味があるという方は、ぜひ弊所の転職サービスをご活用ください。

この記事の執筆者

司法書士法人グラティアス 志村直也

代表所長 司法書士

担当職種:
  • 司法書士

司法書士法人グラティアスの代表所長・司法書士有資格者。司法書士事務所を複数経験しており、業界に関する知識やトレンドを発信中。以前は主に家族信託をメインに生前対策や認知症対策に従事し、現在は売買、相続、民事信託などの不動産登記を中心に、商業登記、裁判業務など幅広く注力。

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