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司法書士の仕事「民事信託」の業務内容|1日の流れや向いている人も解説

by LEGAL JOB BOARD 稲田

転職エージェント

担当職種:
  • 司法書士

こんにちは。司法書士の転職エージェント「リーガルジョブボード」の稲田です。

本記事では、司法書士の「民事信託」に関する業務内容について解説します。民事信託の業務を取り扱う司法書士事務所に転職した場合、どのような業務内容や働き方になるのか、本記事を読むことでイメージが湧くよう執筆いたしました。

業務内容だけでなく、働き方や1日の流れ・忙しさなどあらゆる切り口で解説しています。補足として、民事信託で得られる報酬額についても触れています。

民事信託は、司法書士業界ではトレンドとなっている分野です。キャリアの選択肢としてご検討されている方もいらっしゃるかもしれませんが、一方で業務イメージが湧かないという方もいらっしゃると思います。本記事を通して、少しでも働くイメージが湧くようになったら幸いです!

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司法書士の仕事「民事信託」とは?

民事信託は「委託者が財産を信頼できる受諾者に託し、その財産の管理・運用をお願いする制度」です。財産の管理・運用を支援するのも、司法書士業務の一つというわけです。

2006年に信託法と信託業法が大改正され、「民事信託」という新たな信託が生まれました。

「民事信託」業務を行う司法書士の働き方や1日の流れ

民事信託は毎日同じ業務をルーティンするわけではなく、案件により日々やる業務が異なります。クライアントによって必要な業務が異なるからです。

司法書士が行う民事信託業務は「登記業務」と「信託監督人」の二つ。それぞれの詳細を下記にまとめます。

登記業務

司法書士は、民事信託に関する登記業務を行います。

民事信託に関する登記業務とは、不動産が信託され委託者が不動案を委託するとき、委託者から受託者に所有権移転を行う際の登記業務です。

また、民事信託のため会社設立をする場合、設立登記を行います。

信託監督人

司法書士としての業務に信託監督人があります。

信託監督人とは、他人の財産を管理することに慣れていない親族が受託者になる時、信託監督人制度を利用し信託管理人になること。

司法書士は、「受託者」にはなれません。司法書士は、民事信託の資産を運用する受託者である親族が、

  • 帳簿等の閲覧等請求権
  • 受託者に対する報告請求権
  • 権限違反行為の取消権
  • 利益相反行為の取消権
  • 受託者が損失を出した場合受託者に対して損失補填を求める

上記のような信託業務が適切に行われているのか、信託監督人として確認します。

以上が民事信託の主な業務内容です。

民事信託業務をメインとした司法書士の1日の流れ

民事信託をメインとした司法書士の仕事の1日の流れの例を、以下に記載します。

9:00 始業(メールのチェックや返信・アポイントの確認など)
10:00 法務局訪問
12:00 昼食
13:00 クライアント面談
16:00 デスクワーク
17:00 クライアント面談
20:00 退勤

事務作業だけでなく、クライアントとの折衝業務も大きく業務割合を占めています。

民事信託で司法書士が得られる報酬について

ここからは、民事信託によって司法書士が得られる報酬額について補足します。

民事信託の報酬額の相場は、基本的に

  • コンサルタント費用:財産額の1%
  • 不動産登記費用:10万円前後

これらを合算した金額となっています。

例えば信託する財産が2,000万円の金銭と、評価額3,000万円の不動産の場合、コンサルタント費用として50万円(5,000万円の1%)かつ不動産登記費用として約10万円となります。合計60万円が司法書士の報酬金となります。

民事信託メインの司法書士事務所の忙しさ

民事信託メインの司法書士事務所は忙しい印象です。民事信託は比較的新しい分野であるため、司法書士の中でも若い勢いのある先生が好むからです。

民事信託業務が忙しいこともありますが、若い先生の営業力や行動力で案件を請負う数が多くなるため、司法書士の人数のわりに案件数が多くなっている可能性も。

しかし登記業務とは違い、「この時間までに法務局へ行かなければならない!」といった時間的制限はないため、自分自身で上手く業務配分できることが魅力です。

民事信託メインの司法書士事務所で働くメリット・デメリット

民事信託メインの事務所で働くメリットは、民事信託自体が将来性のある業務であることです。高齢者が増加している昨今、民事信託の需要は徐々に高まっていく見込みだからです。

また、登記はAIやリーガルテックに取って替わるかもしれませんが、この民事信託はAIではカバーできません。

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今後AIの台頭により司法書士業界に大きな影響を与えると言われていますが、民事信託はまだまだ人が必要とされるでしょう。資産管理を手伝うにあたり、案件が個別具体的で機械的な作業では業務を遂行できないからです。またクライアントと関わる機会が多いからです。

一方でデメリットは、今後伸びる見込みのある事業とは言うものの、本当に将来的に伸びるのかどうかは未知な部分。というのも、信託メインで売上を伸ばしている事務所があまり多くないからです。

プレイヤーがまだまだ少なく、まだ顕在化していない懸念点もあるかもしれません。

民事信託に向いている人

民事信託にもっとも大切なのは総合的な解決力」です

民事信託を頼むクライアントは、資産家や会社の経営者などがほとんどで、財産が多く、年配の方がほとんど。

人生経験豊富なクライアントと話して、内容を汲み取り寄り添う力がなければ信用して任せていただけないからです。司法書士以外の分野でも豊富な知識や経験を有していることが求められます。

また、財産を管理する上で、幅広い視野を持ち提案できる力があるかどうかも求められます。

クライアントによって、財産管理の仕方や財産を取り巻く環境は違います。

また万が一にもトラブルがあってはならないため経験豊富な司法書士に依頼が来ることが多いです。

民事信託はトレンド業務

民事信託は、成年後見と並び、今後司法書士の活躍が期待される業務です。高齢化が進む中で増えていく見込みのある業務だからです。

実際、民事信託メインの事務所を希望する求職者が弊社にご相談に来られるご機会が増えました。

もちろん、民事信託を請負っている事務所は多くありますが、民事信託をメインでおこなう事務所はまだまだ少ない印象です。

そのため、民事信託メインと絞って転職活動をしていくとなかなか思い通りに進まない可能性もあります。転職活動をしていく中で、行き詰ったらぜひ弊社LEGAL JOB BOARD(リーガルジョブボード)にご相談ください。

未経験司法書士で民事信託を希望している場合

未経験の司法書士の方はいきなり民事信託をメインとする事務所へ行くのではなく、登記や幅広い業務を扱っている事務所で経験を積むことが多いです。

もちろん、未経験で民事信託メインの事務所の求人へ応募するのがダメというわけではありません。

しかし、民事信託をおこなう上で、司法書士としての経験や社会人としての経験は大切。上記でもお話した通り、相手にするクライアントは資産家や会社の経営者で、司法書士経験がある方が信頼されやすいためです。

もともと金融機関やコンサルなどで、金融の動きや人へ提案する力がついている方でなければ、未経験司法書士はなかなか信用されにくいです。

司法書士業務経験、社会人経験を積んだ後、民事信託業務を請負った方がスムーズに業務をすすめられることがほとんどです。

この記事の執筆者

LEGAL JOB BOARD 稲田

転職エージェント

担当職種:
  • 司法書士

リーガルジョブボードの司法書士専門の転職エージェント。代表の人柄、事務所の雰囲気、経営方針といった「求人票だけでは見えない情報」をお伝えして、皆様の実りあるキャリアの実現のお手伝いします。士業界はまだまだ就業環境が整備されていない状況です。皆さん一人ひとりの転職をお手伝いしながら、ひいては士業界全体の働き方が変わるように、尽力します。

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