司法書士
司法書士平均年収

司法書士の平均年収と転職時の提示年収を年齢別・エリア別で解説

by LEGAL JOB MAGAZINE 編集部

編集部

司法書士平均年収

司法書士の転職エージェント「リーガルジョブボード」です。

本記事では、弊社が独自に調査した勤務司法書士472名の年収を、年代別・経験別など様々な切り口で分析し、勤務司法書士の年収事情を徹底解剖しました。

現役司法書士の方はもちろん、司法書士を志している方や事務所の先生方もぜひご覧ください。

また、本記事では転職時の平均提示年収や年収アップの方法についても解説しています。「転職を考えているので、せっかくなら年収をあげたい」と考えている方も参考にしてください。

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司法書士の平均年収は約970万円

「職業情報提供サイト」に掲載されている、司法書士の平均年収(全国)は以下です。

平均年収9,714,000円
就業者数25,560人
労働時間155時間/月
年齢47.2歳
引用元:職業情報提供サイトjobtag(厚生労働省)

司法書士の平均年収は約970万円となっています。

しかしこのデータは「全司法書士」を対象としており、「独立司法書士」なども含まれています。したがって「勤務司法書士」だけに絞った平均年収ではありません

そこで今回、当社(株式会社WILLCO)が保持している勤務司法書士の平均提示年収データから、純粋な勤務司法書士の「平均提示年収」を算出しました。ここからは勤務司法書士に関する年収についてまとめます。

※「独立司法書士」だけに絞った平均年収は以下の記事で解説しています。

勤務司法書士の平均提示年収の調査方法

ここからは、「勤務司法書士」だけに絞った年収について解説します。

ここでの留意点として、本記事で公開するのはあくまで転職時の平均「提示」年収であり、平均年収ではありません。勤務司法書士としてのキャリアを積んでいけば、当然年収も上がっていきます。

◇調査対象
2019年1月~2023年5月までの間に、弊社「LEGAL JOB BOARD」を通してご入職された司法書士資格をお持ちの方のうち、提示年収の算出が可能な20歳~68歳までの472名を調査対象としました。

◇提示年収の算出方法
ご入職時に提示される雇用条件通知書に記載された雇用条件をもとに、提示年収を算出しました。

◇調査項目

  • 提示年収
  • 性別
  • ご入職決定時の年齢
  • ご入職年
  • ご入職が決定した時点での実務経験の有無
  • ご入職された職場が所在する都道府県

これらの調査内容に基づき、各項目ごとの平均提示年収を求め、分析しました。

勤務司法書士の平均提示年収は約390万円

はじめに、上記の前提条件に該当する対象者の提示年収を算出しました。その結果、勤務司法書士の平均提示年収は3,940,640円でした。

提示年収のレンジレートごとの割合は以下のグラフのとおりです。

司法書士平均年収_2023

300~399万円にあたる人が55.72%(263人)と最多でした。

続いて400~499万円が36.23%(171人)、500~599万円が6.36%(30人)となっています。

年収600万円以上の割合は、600~699万円で1.27%(6人)、700万円以上は0.64%(3人)となっており、高年収を提示された方は全体の約2%でした。

一般的に、勤務司法書士の年収は経験年数やキャリアによって大きく左右されます。

そのため、実務経験なしの方が53%と約半数を占める今回の調査では、このような結果になったと推察されます。

男女別の平均提示年収

OECDの統計によると、日本における男女間の賃金格差は22.1%で、世界的に見て格差が大きいとされています(フルタイム労働者の中位所得における男女間賃金格差、2021年)。

では、勤務司法書士の場合はどうでしょうか。

司法書士平均年収_2023_男女別

男女間での平均提示年収の差額は55,572円となっており、女性の方が平均提示年収がやや高い結果となりました。

今回の調査では、経験年数の長い女性司法書士の方が多数調査対象に含まれていたことからこのような結果となったと推察します。

この結果の通り、平均提示年収を基準とした場合、勤務司法書士は男女間での賃金格差がほとんどないといえます。

勤務エリア別の平均提示年収

東京などの都市部と地方とでは所得に差があると聞いたことがある、都道府県別のランキングを見たことがある、という方も多いかと思います。

勤務エリアによる賃金の差はやはり気になるところですが、勤務司法書士はどうでしょう。

司法書士平均年収_2023_都道府県別
勤務エリア平均提示年収対象都道府県
北海道・東北3,964,593円北海道、青森県、岩手県、宮城県、秋田県、山形県、福島県
関東3,941,897円茨城県、栃木県、群馬県、埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県
中部4,224,647円新潟県、富山県、石川県、福井県、山梨県、長野県、岐阜県、静岡県、愛知県
近畿3,893,661円三重県、滋賀県、京都府、大阪府、兵庫県、奈良県、和歌山県
中国・四国3,940,000円鳥取県、島根県、岡山県、広島県、山口県、徳島県、香川県、愛媛県、高知県
九州・沖縄3,790,685円福岡県、佐賀県、長崎県、熊本県、大分県、宮崎県、鹿児島県、沖縄県

勤務エリア別の平均提示年収は、中部地方の4,224,647円が最も高く、続いて北海道・東北の3,964,593円、関東の3,941,897円となっています。

ここ数年、全国に支店展開を進める新興の大規模法人の台頭が著しく、名古屋エリアで支店を展開される法人が急激に増加しました。
それに伴い、特に愛知県を中心とした中部地方において司法書士の需要の増大が顕著で、中部地方の平均提示年収も年々高水準になっています。

エリア別に見ると最も高い中部と最も低い九州・沖縄の差額は433,962円で、地域により平均提示年収の差があると言えます。しかし一般的な勤務エリアによる年収差ではなく、各地域における司法書士の需給バランスが影響していると考えられます。

実務経験の有無別の平均提示年収

一般的に、勤務司法書士の年収は、経験年数やキャリアによって左右されます。

では、実務経験の有無によって、平均提示年収にどれくらいの差が生じるのでしょうか。

司法書士平均年収_2023_経験別

経験ありの平均提示年収は4,247,407円なのに対して、経験なしは3,710,451円で、実務経験の有無による差は536,956円となっています

経験ありの場合は経験年数や経験業務などに応じて、前職と同じかそれ以上の提示年収となるケースが多いです。

一方、経験がない場合の提示年収は基本的に年齢などの条件に左右されることなく、全員が同じ水準の金額からスタートになります。
地域にもよりますが、未経験の場合370〜380万円程度の提示年収となることが多いです(2023年時点)。

実務経験の有無による年齢別の平均提示年収

勤務司法書士の年収は実務経験年数に比例するとされていますが、経験年数が同じ場合は年齢による差はないのでしょうか。
ここでは実務経験の有無に応じた平均提示年収を年代別に解説していきます。

実務経験がある場合の平均提示年収

はじめに経験がある場合の平均提示年収です。

年代別経験者平均年収_2023

実務経験がある場合、20代の3,955,974円を除き、平均提示年収は430万円前後でした。

20代の場合は、経験がある方でも経験年数が浅い場合が多く、30代以降と比較して30万円程度平均提示年収が低いことが読み取れます。
一方、30代以降は年齢に関係なく経験年数で提示年収が決定することが多いため、このような結果となりました。

やはり司法書士の場合、年齢による提示年収の差はほとんどないことがこの調査結果から伺えます。

未経験の場合の平均提示年収

続いて、未経験の場合です。

未経験の場合は、20代で約350万円、30〜50代で370万円前後という結果となりました。

未経験の場合も年齢による提示年収の差はほとんどありませんが、20代の場合は学生時代から勉強を続けられた方が多く、基準となる前職の年収が無いことから350万円程度で提示されることが多いです。

一方30〜50代は前職の年収をもとに年収が決定することもあり、20代と比較すると約20万円ほど高い結果に。また、60代になると「再雇用制度」が適応されるケースが多く、年代別に見ると最も低い3,478,444円となりました。

未経験の場合の平均提示年収(2017~2020年)

実務経験がない場合の平均提示年収は、経験がある方と比較すると低く感じられるかもしれません。

しかし、未経験の場合の平均提示年収は近年上昇傾向にあります。

年度別未経験者提示年収_2023

未経験の平均提示年収は、2021年までの360万円台から、2023年の3,891,706円とここ数年で急上昇しています。

前述した通り、提示年収はエリアや年代が影響するので一概には言えませんが、未経験の場合は初年度370〜380万円程度の年収提示が平均的です(2023年時点)。

これには、司法書士資格者の需要増加とキャリアパスの変化に伴い、転職市場において司法書士が「選ぶ立場」になっていることが要因と考えられます。

数年前までは、勤務司法書士として働くことは独立前の修行と捉えられる先生も少なくありませんでした。
しかし近年では、勤務司法書士としてのキャリア形成を希望する方も増えており、採用側も「どうしたら資格者を採用できるか」「どうしたら長く勤務司法書士が定着してくれるか」を重視するように変化しています。

そのため、年収を含めた「働く環境」に関する情報を求職者に向けてオープンにする事務所が増え、結果的に業界内で「司法書士資格者採用」に対する健全な競争が起こりました。
これにより年々未経験者の平均提示年収額も上昇していると考えられます。

司法書士の最高年収は?

ここまで、勤務司法書士の平均提示年収についてお話ししてきましたが、最高年収がどのくらいなのか気になる方も多いのではないでしょうか。

勤務司法書士の場合、一般的には年収は600~700万円程度までで一度頭打ちを迎えることが多いようです。

これには、それ以上の年収に達する前に独立される司法書士の方が多いことや、社員(パートナー)になる等、雇用される立場ではなくなることなどが要因として挙げられます。

勤務司法書士としては、事務所の規模や経営状況にもよりますが、この年収水準に達するには少なくとも勤続5年以上は必要な場合が多いようです。

年収が600~700万円を超えるケースは、インセンティブ制度を採用している事務所である、役職手当が支給されている、といった付加条件があることがほとんどです。

そういった付加条件なしで年収600~700万円以上を目指す場合、既存の案件をこなすだけでなく、自ら新規の案件を増やすといった努力が求められることでしょう。

支店長や代表社員、役員など、責任の重いポジションに就くと、年収1,000万円を超えるケースも出てきます。

キャリアと年収のリアルな関係

では、実際に600~700万円の年収を提示された方はキャリアにどのような特徴があったのでしょうか。

弊社リーガルジョブボードを通じてご転職された方の具体的な事例で見ていきます。

提示年収600万円台のケース

◇提示年収 600万円/経験 約14年/当時40代
この方は司法書士資格を取得後、3年半ほど事務所に勤務。その後、司法書士法人を設立し、司法書士業務に加えて共同経営者としての業務も行っていました。

さらに、商業登記や当人のみが処理できる複雑な業務を伴う不動産登記などを行っていたこともあり、高年収での入職が決定しました。

◇提示年収 620万円/経験 約13年/当時50代
司法書士の資格を取得する以前は、一般企業に15年間勤務していたこの方。事務所で約1年経験を積み、独立開業して約12年間、個人事務所を経営。

司法書士としても経営者としても経験豊富だったうえ、資格取得後から司法書士の予備校で15年にわたって講師を務めていた経歴も高く評価され、支店長ポストでの入職となりました。

◇提示年収 660万円/経験 約15年/当時40代
この方は司法書士としての実務経験が15年あるベテランだったため、全ての業務を経験したことがある上、行政書士と社会保険労務士としても18年の実務経験がありました。また、入職先の事務所で重要なポジションだったことも高年収の要因に。

年齢や人柄が事務所の方々とマッチしていたことが、入職の大きな決め手となりました。

提示年収700万円台のケース

◇提示年収 700万円/経験 約8年/当時20代
当時20代後半にして、提示年収が700万円となったこちらのケース。この方は大学4年時に司法書士の資格を取得し、事務所で6年勤務したのち、企業の法務部に2年勤務。

司法書士経験があり、企業法務部で多様な経験もあったため、組織内のマネジメント体制強化を図ろうとしていた事務所と非常にマッチし、幹部候補として入職に至りました。

◇提示年収 700万円/経験 約4年/当時40代
この方は大学卒業後、司法書士とは全く異なる職業を経験し、司法書士補助者を経て司法書士資格を取得。司法書士としての経験は4年程でしたが、商業登記のなかでもM&Aやストックオプションなど、法律事務所や企業でも経験を活かしやすい分野をほぼ全て経験していました。

そのため、前職よりも年収アップが見込める法律事務所への入職が決定しました。

勤務司法書士が年収を上げる方法

勤務司法書士として働くからには、年収アップを目指したいという方が多くいらっしゃるかと思います。

勤務司法書士が年収を上げるためには、事務所にとって価値の高い司法書士になる必要があります。

では、どのようなスキルや経験が必要なのか、具体的にご紹介します。

幅広い知識を身につける

まずは何といっても、幅広い業務知識を身につけることです。

特定の分野に限らず、幅広い分野に精通した司法書士は取り扱える業務も増えるため、事務所にとって重要な存在となります。

特定の分野に特化した司法書士を複数名雇うよりも、幅広い分野に精通した1名を雇う方が事務所にとって効率的であり、当然その1名に支払う給与も高くなります。

認定司法書士になる

認定考査に合格して認定司法書士になると、民事紛争の案件にも対応できます。

司法書士試験に合格した後、知識が定着している1年目に受験するのが最も合格しやすいとされている認定考査。

例年、合格率は60%台後半~50%台後半ほどでしたが、2018年は43.1%と厳しい結果に。

しかし、翌2019年の合格率は79.7%、2022年は65.3%と、合格率が乱高下することも知られています。

認定考査は「70点満点中40点以上で合格」という絶対評価のため、合格率が変動しやすい傾向がありますが、司法書士資格者の約75%が認定を受けています。

司法書士として幅広く業務を行うためにも、必要とされる資格です。

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コンサルティング能力の向上

コンサルティング能力を身につけることも非常に重要です。

AIの台頭により、今後職種を問わず人間が担当する業務が減少するといわれています。
司法書士に関しても例外ではなく、特に登記の分野はAIの活躍が予想されます。

反対に、相続や信託などのお客様と向かい合って面談をし、サービスを提供する業務は今以上に成長するでしょう。
最近ではそのような分野に注力している事務所も多く、営業力や折衝力を含むコンサルティング能力を身につけていることが個人の強い武器となります。

コンサルティング能力を活かして幅広い業務で活躍できれば、年収アップが見込めます。

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インセンティブを得る

事務所によっては条件次第でインセンティブを得られることがあります。

例として、新規営業に対するインセンティブや個人受任案件に対するインセンティブ等々。

こうしたインセンティブを得るためには、前述してきたような幅広い知識や営業力、コンサルティング能力を活かし、事務所から仕事を与えられるだけではない司法書士になることが必要です。

役職に就く

支店長や代表社員、役員などの役職に就き、役職手当を得ることも年収アップの方法の1つ。

多くの司法書士が在籍する事務所では、各チームの司法書士を統括するための役職が存在します。役職に就くと責任が重くなる分、その対価として役職手当が支給されるケースが多いです。

役職に就くためには、多くの仕事をこなすだけでなく、部下を統率して育てるためのマネジメント能力を磨く必要があります。

企業の法務部を目指す

弁護士のイメージが強い企業法務ですが、実は司法書士でも就職可能です。

管理者クラスともなると、年収1000万円に到達することも。

一般企業の基準での評価になり、司法書士の独占業務というよりも、リーガルチェックやコンプライアンス関連など、法律の知識を活用しての業務になります。

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キャリアを積む

結局はキャリアを積むことが最も確実な年収アップの方法です。

ここまで色々とお話ししてきましたが、勤務司法書士が年収アップを目指すうえで、最も重要な要素は経験値です。

司法書士の年収は年齢などの条件よりも、キャリアや実績に影響されますので、勤務司法書士は長く続けたり業務の幅を広げたりするほど、年収が上がっていく傾向にあります。

キャリアを積むことこそ、シンプルかつ着実な年収アップの方法だといえます。

また、年収を上げる方法についてはこちらの動画でも解説しておりますのでぜひ参考にしてください。

転職エージェント利用は「年収アップの近道」

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この記事の執筆者

LEGAL JOB MAGAZINE 編集部

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士業専門の業界・転職情報メディア「LEGAL JOB MAGAZINE」の編集部。 司法書士や弁護士、弁理士、知財職種、土地家屋調査士、測量士などの職種を取り扱っています。 転職・就職ノウハウと業界知識に関する記事を中心に、インタビュー記事やイベント情報も発信します。

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