司法書士試験合格後の流れやスケジュール
司法書士試験合格後の流れ・スケジュールをまとめました。
研修関連の日程は、例年のスケジュールを参考に、大まかにまとめています。
※令和4年度の具体的な日程が分かり次第、図表もアップデートする予定です。
一般的に合格後はこのような流れになります。研修後、開業をしたり、司法書士ではない職種に就く方もいますが、そのような方はごく稀です。研修後ほとんどの司法書士は司法書士事務所へ就職しています。
新人研修の概要
司法書士の新人研修は、「1年以内に司法書士登録を行い、司法書士会に入会を予定する方」が対象です。
具体的には、中央新人研修、ブロック新人研修、司法書士会新人研修(配属研修)、特別研修の4つがあります。
※各研修の内容や日程などは、令和4年度の情報が公開され次第、内容を更新いたします。
中央新人研修
中央新人研修は、司法書士が行う主要業務や活動の成り立ち、司法書士としてのマインドや職責・倫理などを習得するための研修です。
e-ラーニング形式で行われ、自宅や事務所からパソコン・モバイル端末で受講できます。自身でインターネット環境を整える必要があるため、研修までに準備をしておきましょう。通信量や視聴利用推奨環境への対応の観点から、パソコンかつ光回線での視聴が推奨されています
視聴期間は「ブロック新人研修の受講会場ごと」に異なりますので、確認が必要です。令和3年度は、第1グループ(中部・中国・四国・九州ブロック)、第2グループ(北海道・東北・近畿ブロック)、第3グループ(関東ブロック)に分かれていました。
詳しい研修カリキュラムや講義内容は、こちらからご確認ください。
中央新人研修の受講料は4万4,000円で、ブロック新人研修の3万3,000円と合わせて、計7万7,000円を支払います。
【日程】
令和4年度は、令和4年12月3日~令和5年1月22日の間で実施予定(※)
例年12月~翌2月頃に、1ヶ月半~2ヶ月程度
※令和3年度は、令和3年12月13日~令和4年2月1日(3グループ各16日程度)
【修了基準】
「e-ラーニング研修の全受講」と「レポート提出」
【費用】
4万4,000円(ブロック新人研修の費用と合わせて支払い)
※参照:神奈川県司法書士会「令和4年度 神奈川県司法書士会 新人研修のお知らせ」
ブロック新人研修
ブロック新人研修では、実務に直結したプログラムが用意されています。
研修は、北海道・東北・関東・中部・近畿・中国・四国・九州の各ブロックごとの実施です。原則として、開業予定地での受講が推奨されています。会場の都合により、定員を設ける可能性があるため、早めに申し込んでおくと安心でしょう。
日程や実施方法、修了基準はブロックによって異なりますので、注意が必要です。各ブロックの研修カリキュラムや講義内容は、こちらからご確認ください。
受講料は3万3,000円で、前述のとおり中央新人研修の分と合わせて支払います。
【日程】
例年12月~翌1月頃に、1~2週間程度
【実施方法】
集合形式やWeb形式(※ブロックにより異なる)
【修了基準】
ブロックにより異なる
【費用】
3万3,000円(中央新人研修の費用と合わせて支払い)
司法書士会新人研修(集合研修・配属研修)
司法書士会新人研修は、「集合研修」と「配属研修」に分けて実施されるケースが多いですが、司法書士会によってはどちらか一方のみの可能性もあります。
集合研修では座学で司法書士実務を学びます。司法書士業務に関して、先輩司法書士が実務経験を交えて話してくれます。また、抽選で裁判所や法務局を見学できることも。司法書士会によって異なりますが、集合研修の受講料は3万円前後が一般的です。
配属研修では司法書士会の各会員事務所で実務に触れます。配属研修は基本的に無料ですが、期間中の給料支給などはありません。
司法書士会新人研修では、登録予定の司法書士会を選択することが推奨されています。しかし、東京司法書士会の新人研修テキストは実務にも役立つと言われており、他県から参加する方もいるようです(東京司法書士会に登録予定の方以外も受講可能)。
研修期間や申し込み方法などの詳細は、司法書士会によって異なります。登録予定の司法書士会の情報を確認するようにしましょう。
【日程】
例年12月~翌4月頃に、数日~2週間程度(※単位会により異なる)
【費用】
▼集合研修
3万円前後が一般的
▼配属研修
基本的には無料(給料支給なし)
特別研修
特別研修は、認定司法書士になる(司法書士が簡裁訴訟代理等関係業務を行う)ための研修です。
認定司法書士とは、140万円以下の民事訴訟案件に対応できる司法書士です。認定司法書士になるためには、特別研修を修了し、簡裁訴訟代理等能力認定考査に合格する必要があります。
特別研修は必須ではありませんが、8割近い方が受講します。ちなみに、2022年4月1日時点では、司法書士のうち78%が認定司法書士です(※)。司法試験の勉強をしていた等、過去に要件事実を学んだことがない場合は、特別研修の受講をおすすめします。例えば、不動産登記の登記原因証明情報の「登記の原因となる事実又は法律行為」は、要件事実を書く欄になります。
研修の内容については、下記の関連記事をぜひご覧ください。また、費用や日程は例年以下のようになっています。
【日程】
▼特別研修
例年2月~3月頃
※直近2回は5月末~7月初め頃に、1ヶ月半程度
▼認定考査
例年6月頃
※直近2回は9月10日前後
【費用】
▼特別研修
14万5,000円
▼認定考査
1万900円(収入印紙で納付)
合格後に研修を受けないとどうなる?
合格後に研修を受けないと、司法書士として働くことができません。
「司法書士は定められた研修を受け、その資質向上に努めなければならない」という旨が法律で定められています。合格後1年以内に司法書士登録(司法書士会への入会)を予定している方は、研修の案内があったら速やかに申し込み、受講するようにしましょう。
ただ、「司法書士として働く予定がない」「会社員として働きながら受験し、退職してからでないと研修を受けるのが難しい」といった場合は、すぐに研修を受ける必要はありません。研修を受けないで合格から1年経過すると、研修受講状況の確認が行われるようです。研修を受けなくても、合格が取り消されることはありませんので、ご安心ください。
合格後の就職活動のベストタイミング
ここからは、合格後の司法書士の就職活動について解説します。
就活のタイミングは4つあります。最も理想的な就活スケジュールからご紹介します。
①10月の筆記試験合格後(一番おすすめ)
筆記試験合格後となる「10月~11月」が、就職活動を始めるベストタイミングです。
筆記試験に合格していれば、資格者として就職活動を始められます。合格見込みの方は、10月には動き始めるのがおすすめです。求人数がグンと増加する10月~11月に就職活動を進めることで、人気の求人・事務所の応募が締め切られる前に応募できます。
適切な求人・事務所選びのため、10月までに「どんな事務所を受けるべきなのか」「どんな業務が自分に向いているのか」を、ある程度分析しておけると良いでしょう。とはいえ、業界の動向・トレンドを把握しながら、なおかつ理想的なキャリアパス実現することは容易ではありません。
「どんな事務所を選ぶべきか分からない」「司法書士業界について理解を深めたい」といった方は、司法書士専門エージェント「リーガルジョブボード」にぜひご相談ください。
近年、相続・商業といった業務内容の事務所・求人が人気の傾向にあり、高倍率で希望通りにいかない方もいる状況です。早めに情報を収集し、募集中の求人にチャレンジできるよう備えましょう。
令和4年度の合格見込み者に向けた「王道の就活スケジュール」を公開中!
求人に応募するタイミングは「10月」がベスト。理由は以下の記事をご覧ください。
【令和4年度版】司法書士の就職活動|まず何をすればいい?いつ求人に応募する?王道スケジュールを解説
②口述試験合格後
口述試験合格後、新人研修までに1ヶ月ほど時間があり、その間に、情報を集める方も多いです。
SNS上などでも合格者間の繋がりができますし、口述試験会場では同期の方と実際に顔を合わせることになります。そのような状況により、だんだんと司法書士として働くイメージが湧いてくるのではないかと思います。
そのため、筆記試験ではなく、口述試験後の試験が本当に終わったタイミングで就職活動を始めたいという方も多いです。ただ、先ほども述べたように、筆記試験に合格していれば事実上の合格者として就活をすることが可能になります。
動き始めるタイミングが早いに越したことはありません。筆記試験に合格していた方は、積極的に情報を収集することをおすすめします。
③新人研修後
新人研修が終わってから、落ち着いて就職活動をスタートさせる方もいます。
パターン①は「就職先での本業」と「研修」を両立する必要がありますが、このパターンではその必要がほぼありません。「本業と研修の両立は大変そうだから、就活は研修が終わる頃に始めたい」という方が、このパターンに当たるかと思います。
しかし、研修期間の1月からは求人数が少なくなる傾向にあり、希望に合った求人が見つからない可能性も。
就職活動を有利に進めたい方は、できる限り筆記試験合格後の10月~11月に動き始めることをおすすめします。
④認定考査終了後
少数派ではありますが、例年6月頃の認定考査が終わってから、就職活動をスタートする方もいます。
この時期になると、同期合格の司法書士はすでに事務所で働いている人がほとんどかと思います。そのため、同期から情報を得て、自分に合った事務所を探せるというメリットはあるかもしれません。
その反面、求人はあっても上記③よりさらに、人気の事務所への就職は難しくなります。さらに、「なぜ合格発表からずいぶん時間が経過したにも関わらず、アクションを起こさなかったのか」を聞かれることもあり、デメリットも多く感じるでしょう。特別な事情がなければ、このタイミングでの就活はおすすめできません。
特別研修中は、休みを考慮してくれる事務所も多いです。ハードだとは思いますが、早めに動き出しましょう。多くの先輩司法書士が通ってきた道なので、きっとあなたも大丈夫です。
司法書士事務所の選び方
転職・就職する時に大切なのは「自分を知ること」です。
なりたい司法書士像から逆算し、どんな事務所に就職すべきかを判断しましょう。
- どんな司法書士になりたいのか
- できることは何か、やりたいことは何か
- 独立したいのか、法人のマネージャー職を目指すのか
例えばこういった考えを明確にすることで、自分に合った選択が見えてきます。
事務所の種類や特徴、詳しい業務内容、メリット・デメリットなどは、以下の記事でご確認いただけます。
司法書士合格後にすぐ独立するのは可能?
司法書士登録をして、すぐに独立開業をする方も一定数います。
ですが、
- 司法書士事務所での補助者経験が長い
- 親や知り合いが司法書士事務所を経営している
- 前職が不動産会社勤務・金融機関勤務等で、仕事を受注する当てがある
といった背景がない限り、まずは司法書士事務所に就職した方が無難です。
司法書士試験で学んだ知識だけでなく、実務経験がないと分からないことも多々あります。例えば、委任状には「登記識別情報の暗号化の件」が委任事項に含まれていないと補正になります。これは私も実務に出て初めて知りました。
もし、どうしても即独立開業をしたい場合は、先輩司法書士や同期の司法書士に助言やチェックをしてもらうなど、自力で実務を学んでいくという方法もあるでしょう。
合格後の司法書士登録に必要な費用
試験合格後、司法書士として働く方は「司法書士登録」が必須です。
司法書士登録とは、日本司法書士会連合会の有する司法書士名簿への登録を意味します。司法書士として就業する地域の司法書士会への入会も必要です。
登録・入会にかかる費用は以下の通りです。
- 登録手数料:2万5,000円
- 登録免許税:3万円
- 各司法書士会 入会金:2万5,000円~5万円程度(参考:東京は3万5,000円、大阪は4万円)
- 各司法書士会 会費:年20万円~30万円程度(参考:東京は月1万7,200円、大阪は月1万7,000円)
登録・入会には計30万円前後の費用がかかります。登録費用や会費を負担してくれる司法書士事務所もありますので、登録までに確認し、しっかりと備えておきましょう。
ちなみに、各司法書士会の会費は地域によって、年額や月額など納め方が異なるようです。
合格後に司法書士登録をしないとどうなる?
司法書士登録をしない場合、司法書士として働くことができません。
司法書士試験に合格すれば、司法書士となる資格を得ることができます。しかし、実際に司法書士として働くには、司法書士登録が必須です。
登録に期限はないので、合格後すぐに司法書士として働かない方は、登録しなくて良いでしょう。会費などは実働に関係なく、入会していれば納めなくてはなりません。そのため、実際に働き始める前に登録するのが合理的だと思われます。
また、「他の職業に就いて司法書士業務(登記申請業務)を行わない」「知識を活かして企業法務部で働く(司法書士とは名乗らない)」といった場合、司法書士登録は必要ありません。
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その理由は下記の記事でまとめているので、あわせてご覧ください。