企業内弁護士(インハウスローヤー)の役割や業務内容
企業内弁護士(インハウスローヤー)の役割や意味・現状について認識を合わせておきましょう。
インハウスローヤーとは、企業から直接雇用されている弁護士を指します。
「企業内弁護士」「社内弁護士」「組織内弁護士」とも言います。
インハウスローヤーの業務内容は、企業内法務の仕事となります。
企業内で働く、弁護士資格を持った会社員であるためです。
一般弁護士のように民事事件、刑事事件などに関わる仕事ではありません。
具体的には、企業活動で生じる契約関連の業務、ガバナンスやコンプライアンス関連の業務、法的観点の相談やジャッジなどです。
そういった法的・法務的観点から企業内部の様々な側面を整理し、問題点や改善すべき点が見つかれば外部の顧問弁護士に依頼します。
法律事務所との違い
法律事務所の業務内容は、刑事事件・一般民事・企業法務顧問など事務所によって、どの分野を得意としているのかは違いがあります。
企業内弁護士の仕事は、企業法務業務です。
法的な視点から企業を守ることが仕事なので、刑事事件や一般民事に携わることはありません。
年収は企業法務弁護士の場合、平均は500〜750万円です。
五大弁護士事務所など、大手事務所に所属する弁護士の場合、年収は初年度から1,000万円以上、中堅クラスで2,000万円~3,000万円前後の給与になると言われています。
中小規模の法律事務所に所属する弁護士であれば、平均年収は600万円~1,000万円前後となりますが、自身の裁量で働くことができるためより多くの収入を得ることも可能です。
顧問弁護士との違い
一方で顧問弁護士は社外からサポートする役割があり、クライアントとなる複数企業との間で顧問契約を締結している法律事務所の弁護士です。
いつでも企業法務相談に乗る体制を整えています。
これが両者の違いです。
インハウスローヤーの母数は増加傾向
弁護士の有資格者数は年々増えています。
そのため多くの法律事務所や弁護士事務所は、弁護士の供給が足りているのが現状です。
以上の経緯から企業へ転職する弁護士の方が増えてきており、結果的にインハウスローヤーの母数も増加傾向にあるということです。
インハウスローヤーの需要も増加傾向
インハウスローヤーの母数だけでなく、需要も高まってきています。
企業が弁護士を必要する場面が徐々に増えてきているからです。
例えば、企業活動で生じ得るリスクや不正に対するケアやコンプライアンスへの意識が強まってきているのが理由の一つです。
また、時代が進むにつれてビジネスのあり方もあらゆる形へと変化しており、その分、法令違反や予期せぬ不祥事も起こり得る状況です。
こういった背景から、インハウスローヤー職を組織に取り入れ企業活動をサポートしようとする動きが強まりました。
弁護士資格がなくても就職できる
ちなみに、弁護士資格がなくとも企業法務に就くことはできます。
この場合、インハウスローヤーではなく「法務」という職になります。
資格の有無よりも経験値やスキル・ポテンシャルを見られるので、弁護士資格がないからと言って落ちることはありません。
インハウスローヤーの平均年収
平均年収は500〜750万円です。
一般的な職種に比べると高いですが、法律事務所や弁護士事務所よりは低い傾向にあります。
しかし、所属する企業の福利厚生や待遇が他の社員と同じように適用されるので、入社する企業によっては恩恵を受けることも可能と言えるでしょう。
新卒でインハウスローヤーに就職する方法
司法修習後、新卒でインハウスローヤーに就職するのは、なかなかハードルが高いです。
企業内弁護士は経験者が求められる傾向にあり、また司法修習生も相談可・新卒OKの求人自体が少ないため。
しかし、転職エージェントや弁護士会の就職説明会などをうまく利用すれば、新卒でインハウスローヤーになることも可能です。
下記では、新卒で企業内弁護士になる方法や条件を徹底解説しています。
インハウスローヤーに転職する際に求められるスキル
インハウスローヤーへ転職する際に求められるスキルや経験についてまとめます。
あらかじめ把握しておくことで、書類選考や面接選考でアピールするポイントも明確になるはず。
インハウスローヤーに転職を検討している方は以下を参考にして、選考を有利に進めましょう。
※ちなみに、以下を全て満たしていなければいけないわけではありません。
どれか一つでもあれば大きなアピールとなります。
実務経験・即戦力
基本的に実務経験が必須条件となり、未経験での入社はほぼ難しいのが現状です。
実務経験とは、以下のような業務を指します。
- 契約書の作成
- 取締役会、株主総会の運営
- コンプライアンス法務、社内規定
- 事業承継法務
- 紛争対応法務
- 訴訟管理
など。
まずは契約書の作成・チェックを周りからの指導なく、一人で作成できるスキル・経験を持っているかどうかが書類通過の第一関門となります。
コミュニケーション能力
各部署への法的アドバイスやサポート、弁護士事務所との対応なども業務に含まれます。
各部署の起こりうる問題や実現したい事柄に対し、会社にとっての最善の方法・実現する方法を法的観点から共に考え提案する能力・折衝力が求められます。
以上から、自身以外の方々と円滑にコミュニケーションを取れるかどうかが大切となります。
英語力
企業によっては海外案件があります。
大手企業ほど海外に市場を置いており、英語力が求められることが多いです。
弁護士資格があっても、英語力がなければスムーズに対応できません。
法に関する専門知識に加え、英語力も備わっていれば、非常に重宝される存在となります。
マネジメント能力・経験
中規模以上の法部署を設けている選考先の場合、マネジメント経験の有無も重要になります。
入職後は、後々に入職する法務職の方々を統括する役割を担う場合もあれば、法務部でマネジメント枠のみ募集していることも少なくないからです。
そのため選考先の規模が小さくない場合、マネジメントできるのかどうかを採用担当者はチェックします。
また年齢にもよって異なります。
~30代の経験者であれば売り手市場に入り、40代以降は実務経験に加え「組織作り」を求められることが多いです。
インハウスローヤーへの転職メリットや転職理由
ここからは、弁護士がインハウスローヤーに転職する主な理由や、インハウスローヤーに転職することでのメリットをまとめます。
以下を参考にすることで、転職の判断材料になりうるはずです。
ワークライフバランスが取りやすいから
弁護士事務所や法律事務所は一般的に「業務委託契約」を交わします。
そのため就労時間が決まっているわけではありません。
あくまで受け持った案件を納期までに処理できるかどうかが第一であり、1日8時間勤務をすれば問題ない、というわけではないのです。
一方でインハウスローヤーの場合は、所属する企業の労働規則に則って勤務します。
残業の有無や休日・有給日数などは企業によりますが、ワークライフバランスが取れている企業であればその待遇を他社員と等しく適用されることになります。
実際、「ワークライフバランスを重視したい」という理由でインハウスローヤーに転職する弁護士の方も多くいらっしゃいます。
安定したいから
企業に属することで、毎月の基本給は必ず受け取ることができます。
大手企業や有名企業であれば、さらに年収は安定するでしょう。
安定思考のもと、インハウスローヤーに転職するという転職理由も多数存在します。
ビジネスの事業に携わりたいから
自らがビジネスの最前線に立って主体的に事業(プロジェクト)に関わり、会社を成長させたいという志向の方もいらっしゃいます。
外部の弁護士として間接的にアドバイスをするだけでは、関われることにも限界があります。
ビジネスの世界に自らを投じることで、直接的に案件を手掛けることに魅力を感じる弁護士も多く見受けられます。
インハウスローヤーに転職するデメリット
インハウスローヤーに転職するデメリットは、給与の最高値が大体決まっていることです。
法律事務所の場合、自分の力で収入を上げることが可能です。
しかし企業内で働く弁護士は、企業の基準でだいたい収入の最高値が予想できます。
1,200万円〜2,000万円、それ以上の高年収を目指したい場合は、法律事務所が向いています。
インハウスローヤーの求人を多数ご紹介します
弊社LEGAL JOB BOARD(リーガルジョブボード)では、インハウスの求人を多数ご紹介できます。転職活動中の方、転職しようか悩んでいる方はお気軽にご連絡ください。
リーガルジョブボードは弁護士専門の転職エージェントサービスです。
ご登録いただくと、ウェブサイトには掲載されていない、登録者限定の「非公開求人」を数多くご紹介いたします。
また転職エージェントは以下のサポートも提供するため、あなたの転職活動がグッと有利になります。
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- キャリアパスの策定やご相談
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ちなみに、自分でインハウスの求人に直接応募するより、転職エージェントを経由して応募する方が内定率がグッと上がることをご存知でしょうか?
理由は以下の記事で詳細に解説しているので、あわせてご覧ください。
インハウスローヤーに転職する際の注意点やコツ
最後に、インハウスローヤーに転職する際の注意点やコツをまとめておきます。
企業規模による求められる人材の違いを把握すること
同じ法務でも、規模や業界によって求められる人材は様々です。
採用情報・募集要項に十分に目を通し、先方が求める像を理解することが必要です。
[ 小規模(法務1人)] 法内部組織が確立されていないことが多く、いわゆる一人法務なため、経験の長い上司や先輩社員から学ぶことはできません。 整備されていないところを一から作り上げていく過程にやりがいを感じ、常に前向きで積極的な方が求められます。 |
[ 中規模(法務部5〜10名程度) ] このくらいの規模になると上場していることが多いです。 非上場でも上場企業の子会社の場合、社会的地位のある企業であるためコンプライアンス重視。 基本的に上司や先輩社員から学べる環境だと言えます。 法的な観点からビジネスを検証し、法的リスクの提示・リスクヘッジやリスクコントロールの方法を提案できるスキルが求められます。 |
[ 大規模(法務部が10名以上) ] これくらいの規模になると、上場企業でも、東証一部上場企業のように日本を代表する企業が大半です。 そうすると、海外展開を行っていることが多いと言えます。 人数増加にあわせて分野ごと(契約・渉外関係・法律相談など)に分けられていることもあります。 以上から、海外での法的な知識の専門スキルを培っている海外法務の経験者や、法務ゼネラリストの方が求められると言えるでしょう。 |
業界によって異なる求人内容を把握すること
同じ法務系の求人でも、選考先が属する業界によって、求人内容は異なります。
すでに選考先が決まっている場合は、下記をチェックし、その選考先の業界に沿ったアピールポイントを洗い出してみてください。
[ IT業界・ベンチャー ] ITやベンチャー業界では、新規事業案件が多い傾向にあるため、リスク調査が求められます。 また、法律の整備が整っていないことが多くあります。 スピード感を持ち、法的ジャッジをする能力の長けている方を求められます。 補足として、扱っている商材に興味関心を持っているとそれもプラス評価となります。 |
[ 製造業 ] 仕入れ・製造・販売と局面によって異なるリスクが生じるため、的確な対応力が求められます。 |
[ 金融業 ] 単純な法務の知識だけではなく"金融規制法(金融商品取引法、銀行法、保険業法、信託業法等)”の知識、経験・理解が求められます。 |
妥当な希望年収を提示すること
提示する希望年収は大切です。
それによって、選考の突破率は変わると言っても過言ではありません。
法律事務所からインハウスローヤーへの転職の場合、企業の方が年収レンジが低いため、現在の年収よりも下がってしまうことが多いです。
年収が下がっても良いのか否かをまず考え、更に、ご希望の年収を素直に提示すると書類で落とされてしまう可能性があるので、調整が必要です。
希望年収の調整は大切なため、お悩みの方は転職エージェントに相談すると、あなたのご希望と選考のバランスを取った最適な希望年収を提示してくれます。
弊社でも無料でご相談を承っておりますので、ご興味がございましたらご連絡くださいませ。
※お急ぎの方は右下のチャットにお送りいただけると幸いです。
志望動機や面接対策を徹底すること
内定を得るためには、志望動機・面接対策はとても大切です。
採用側は、何人もの弁護士をみてどの方を迎えるかを考えます。
スキルを比べ選びかねているときは、志望動機をみてその人の人柄や応募に対する熱量をはかることも多いです。
さらに、面接では見た目の印象だけではなく、緊張せず対応できるよう準備が必要。
下記の記事では、志望動機の作り方やコツ・面接対策について詳しくまとめています。
また、面接対策の一つとして、弊社リーガルジョブボードでは模擬面接を実施しています。
内定率がグッとアップしますのでぜひご活用ください。
まとめ
インハウスローヤーと法律事務所とでは、仕事の内容や進め方など大きく異なります。
また一口にインハウスローヤーといっても、幅広い業界や企業によって求められるものはそれぞれです。
法律事務所よりも企業の方が採用ハードルも高い傾向にあるため、企業に転職しようとする場合は、法務専門のエージェントにご相談すると良いです。
求人先がどういう人材を求めているのかを詳細に聞くことができるため、ご活用してみてください。